暗渠めし la Salle サル・キッチン
東中野近くの、神田川のあげ堀のはずの、とある流れ。
なぜか昔も今もこの流れは好かれているように思います。あげ堀ながら名前が付けられていたり、ひとびとが集ったり。写真に、よく(?)撮られていたり。
小淀川の下流部であるとする人もいますが、わたしはこの流れは「神田川桐ケ谷支流(仮)」と、勝手に呼ぶことにしています。
きょうは、その桐ケ谷支流(仮)沿いにある、暗渠めしのおはなし。
最初にここを歩いたとき、もっとも印象的だったのはやはりこの階段でした。
暗渠じたいもとても、狭くて、鄙びていて、よかったのです。
それから、サル・キッチンのたたずまい。桐ケ谷支流(仮)沿いにポコンと建っていて、「てづくりシフォンケーキとかありそう」な、午後にだけ開いてるカフェ、みたいな印象でした。
いつかここでケーキを食べたいなと思いつつ、やがて、それが勘違いで、ここはコースのみのフレンチレストランであることを知ります。
***
最初にサル・キッチンにきたときのことは、忘れることができません。
それは、その年にしては猛烈な台風の日でした。ひどい暴風雨で、翌週行った植物園では、こんなに木が折れまくったのははじめてだ、などと、職員さんから聞きました。桐ケ谷で食べると決めていた当日の朝、あまりに強い雨風に、訪問を逡巡したほどでした。
午後になると雨が弱まってきて、でも風がびゅうびゅうと吹いていて・・・そんななか、いつものように桐ケ谷支流(仮)の暗渠をあるいて、わたしたちはサル・キッチンに行ったのです。
その日は、わたしの誕生日だったから。
決めたことを覆すのも、好きではなかったし。
きっと誰もお客さんいないだろうね、なんて言いながら。でも着いたら、隣のテーブルには老夫婦と若夫婦という家族連れがいらしてて、ちょっとびっくりしたりして。
その日のひとしな。モロヘイヤのスープのみどり色が、とても鮮やかだった。
食べすすめるうち、その老夫婦のだんなさんも、誕生日なのだとわかりました。「あ、そちらも誕生日(なのでこんな台風の中フレンチを食べに来ているというわけ)なのですね~(微笑)」なんて、ワインを傾けあって。
帰るころには、風もだいぶおさまり、あたたかな気持ちで歩くことができました。
***
また行きたいなと思っていました。
なので、また、行ってきました。やっぱり秋に。
東中野で降り、神田川が削った斜面を下ります。
東中野からサル・キッチンへのアプローチは、きっと何通りかあるでしょう。でもやっぱり歩きたいのは、
ここ。
桐ケ谷支流(仮)のはじまり。
ぐるぐる巻きの電灯、健在。
この擁壁も好き。
暗渠に面した入口。こんなふうな狭くてステキな暗渠に「面している」お店って、なかなかないんです。
小ぢんまりとした、民家を改装したその広さも、桐ケ谷支流(仮)にフィットする良い塩梅。内装は手づくり感があって、あたたかい。接客もあたたかい。
料理は素材が活きる、質実剛健なかんじ。
この日もっとも気に入った一皿。
皮が感動的なほどにサクッ(その1秒後にじゅわっ!)と焼かれたノドグロ、その下に茄子のペースト。フレンチで茄子とは・・・!と脱帽。
栗のケーキでお祝い。
この日は天気も悪くなくて、帰りみち、ウーロウロしました。
近くには桐ケ谷橋の欄干が残っています。以前も、仕事帰りのよるに、桐ケ谷橋がこのへんにある、という半端な情報をもってぐるぐる探したけれど、見つからない、ということがありました(その迷っていた場所は主にサル・キッチンの真後ろの公園でしたw)。
とつぜん、置いてあるのです。この桐ケ谷支流(仮)に架かっていたに違いないもの。
暗渠であることの証明です。・・・暗渠沿いじゃないところに置いてあるのが、ちょっとだけ残念。
桐ケ谷支流(仮)のランドマーク的コインランドリーは、こんなふうに豹変していました。
少し前に通ったときは、工事中のようになっていたので、なくなってしまったのだと思った。コインランドリーとして残っているだけ、よいことなのかな・・・?
ひょっこり、島のようになっているところがかわいらしい。
神田川桐ケ谷支流(仮)をさかのぼってゆけば、いつしか桃園川からの分岐点。そのままさかのぼれば、小淀川。後ろに行けば、神田川。小淀川を歩き続けても、神田川。
いかようにも暗渠をたどり続けられる、帰りみち。
”暗渠めし”、きょうはちょっと、いつもと違う感じだったかもしれません。・・・こんな日も、あります。
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