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2018年4月

板橋カレーラーメン紀行

「板橋マニア」という本が出ました。

Itabasi

地形、団地、境界、商店街、グルメ、ものづくり・・・各領域の魅力が詰まった一冊です。わたしも暗渠の項目で書かせていただきました。

お話をいただいたとき、ともに依頼を受けた高山氏は以前板橋暗渠にドはまりして、ずいぶん網羅的に板橋を攻めていたからいいとして、わたし・・・。断片的にしか巡っていなかったので、迷いました。けれど、取材期間が半年近くあること、板橋の面白さは気になっていたこと、等から、受けることにしました。そしてとにかく通おう、と。

ここからが、今回の記事の背景です。
板橋と言えばしっとりチャーハンやあぺたいとの焼きそばなど、B食充実のイメージがあり、自分的課題店も多く。そして打ち合わせ時に、S&Bの本社が板橋であることを知りました。ふむ・・・S&Bとの関連を探るため、カレーか何かを行く度に食べるのはどうかしら。兎に角、暗渠だけではなく板橋という街に何度も足を運ぶことは重要である。何度でも行きたくなる・・・という引力を持つ食べものは、ラーメンしかない。

・・・こりゃ、カレーラーメンだな。カレーラーメンは、高校の学食でたまに特注していた。なつかしい。醤油ラーメンの上にカレールーが載った代物。あの懐かしいカレーラーメンを提供するような、町中華に行こう。

どんどん暗渠とズレてきていると思うかもしれないけれど、実はわたしはこういう遠回りの努力をすることがとても好きだ。修士論文を書き始める最初の時期、「これは体力が要る気がする」と、キャンパスのランニングから始めた過去がある。最終的な成果物とは何もつながらないことかもしれない。しかし、わたしにとっては大切な土台となる。

さて、カレーラーメンである。

板橋区内のカレーラーメン店を、町中華中心にリストアップした。
普段杉並区で出会う中華屋には、カレーラーメンが置かれていることはまず、ない。そのため、何軒も出てくることにまず興奮を覚えた。S&Bのお膝元だからだろうか・・・?いやいや、早合点せず、とにかく黙って食べてみようじゃないか。

というわけで、以下、カレーラーメン食いの結果(感想)を羅列していきます。

1軒目。カレーとラーメンの店 くっく大番。上板橋。

Oban

カレーラーメン600円。
14:30頃入店すると、既にできあがった男女ひと組、おじさんふたりがそれぞれ盛り上がっている。
バイス?と思ったらそんな色だが「梅サワー」を飲んでいた。
パチンコ帰りのスナックのママもきて、飲みはじめる。・・・ここは飲み屋か?
おつまみに、 カレールー がある。成る程カレールーがあるなんて、これは良い飲み屋だ。
やってきたカレーラーメンには、コーン、もやし、のり、チャーシューと、うつくしい配列。
日清カップヌードルカレー味の匂いがする。これは好ましい。
学食のようなやさしいカレーは、下に沈んでいるので麺をひっくり返して食べると良い。
チャーシューは分厚く肉肉しい。
満足する一杯であった。これは好きな感じだ。イイゾイイゾ、板橋カレーラーメン。

2軒目。喜楽。板橋本町、稲荷通り。

Kiraku

店に入るとまず、空の丼を前に、ぼーっと甲子園を見るおっちゃん。
町中華らしい良い雰囲気だ。
カレーラーメンは、基本メニューには載っておらず、追加メニューで貼ってある。780円。
カツカレーにカレーポテト春巻、追加メニューのうち半分はカレーものだ。
(カレーポテト春巻は再訪して食べたが、この手があったか!という美味なものだった。)
板橋の町中華、ここに限らず、カレーラーメンは追加メニューであるケースが少なくない。
・・・なぜだろうか?どこかの時点で、「S&Bの街だというアピールをしていこうぜ!」という意識が芽生えたのか?どうもS&Bが頭から離れない自分である。

やってきたカレーラーメンには、新妻のような可愛らしい花型人参が添えられ。
麺は細麺。リフトすると、、スープがなく全部カレールーのタイプ。
こういうタイプか、、、麻婆ラーメンでも出会ったことがあるが、普通に啜ると火傷するやつだ。
こちとら猫舌なので本当に用心が必要だ。レンゲに避難させながら、慎重に食す。
豚バラと玉ねぎの家庭的カレー味だが、おいしいので最後まで飽きなかった。
お昼どきは盛況だったらしい(わたしは14時前後に行くことが多い)、きっと人気店なのだろう。

3軒目。上板橋、新華。

Sinka

駅から店まで、くねくねと住宅街を通る不思議なルートだった。川跡のせいもあるのかな。
ここは商店街で、近所に共栄軒(後述)もある。町中華が並んでいて素敵。
カレーラーメン、600円也。
やはりメニューの後半に書いてある。
おばちゃんが丁寧に作る。
見た目は地味。豚肉と玉ねぎのカレーを、醤油ラーメンにオンしたもの。
麺は昔風の中太麺、これは好きなタイプだ。
優しく懐かしい味・・・年取るほどにしみる味。。
ここまでの3軒、カレーの味が大体一緒なのも面白い。

さて板橋区、ここいらは高低差がものすごい。
杉並暗渠に慣れている身としては、派手すぎてなんだか恥ずかしくなってくるくらいだ。
東武練馬なんて駅に向かう道がまるまる谷で、油断ならない。
カレーラーメンを食べては暗渠を歩き、土地の雰囲気を身体にしみこませようとする。夏だったものだから、暑い。2017年夏の思い出はきっと、「板橋カレーラーメン」になるだろうな。

4軒目。共栄軒。新華の至近。

Kyoeiken

メニューにカレーラーメンがある位置が、ここはまた独特だった。
ラーメン類では後半で焼きそばより後だが、味噌ラーメンの方がさらに後だ。このメニューの法則のようなものを考え出すと、これもまた奥が深そうだ。
カレーラーメン550円。
隣の人が頼んだ肉そば?の肉の様子がすごくて、ガン見してしまった。すいません。
カレーラーメンは醤油ラーメンにカレーが乗るタイプ。
麺は黄色の中太、いや新華よりも細い。細いが歯応えがある。この麺も好ましい。
カレーは作り置き、にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、豚肉。これまでのものと似ている。
丼が広口なので、カレーが混ざりきらないうちに、端っこで麺を醤油ラーメンとして食べるという、自由度の高さがあり、これもいい。

それにしても、カレーラーメンも、ラーメンもカレーライスもある店って、注文が混同することはないのだろうか?「カレーラーメンって言ったけど、カレーライスとラーメンの意だった」、とか。。。そんな余計な心配をしながら麺を啜った。

5軒目。曙軒。板橋本町。

Akebonoken

板橋本町は駅にS&Bの広告があり、お膝元感がある。
そこから少し歩く。ここはかなりいい面構え、店内も溢れる昭和の雰囲気で良い。
カレーそば、650円。
メニュー上の順番は真ん中である。
さて・・・ここ、カレーが黄色いのだ!新潟のバスセンターのようだ!
しかも、これまでのカレーと違う味付け。カレーは作りたてだ。
具は豚肉と玉ねぎのみ。醤油ラーメンにかけたもの。
麺は細めで柔らかい。
ただ、醤油ラーメンとしてもカレーとしても味が薄かった。
まあでもこれこそ町中華っぽい。ともいえる味わいだった。
わたしはラーメンにある程度の濃さを求めてしまうのだが、町中華は薄味であることが少なくない(という印象)。

6軒目。西台、キッチン西田。

Nishida

キッチンという名前の割にガチ町中華屋。
人気店かもしれず、2人で足りるのではという広さの店内に3人も店員がいる。
カレーラーメンはメニューの最後に鎮座、780円なり。
醤油ラーメンの上にカレーが乗るタイプだが、なんと醤油ラーメンの具がまんま乗っていて、アガる。
麺は透明感のあるタイプ、醤油ラーメンに合うやつだ。
個人的好みでいうと、カレーラーメンの場合もう少し強い方がいいな。。
豚肉と玉ねぎのカレー。チャーシューと豚肉、白髪ねぎと玉ねぎが被るが、それもいい。
なんというか、包容力あるメニューだ。

7軒目。大山。ちょっと歩いて清華。

Seika

広めの店内。
やはり14時前後だったのだが、先客はチューハイでベロベロの男性2人。
ああここも良き「飲める町中華」なのかもな。
オーダーすると、酔っ払い2人に「カレーラーメンだって」、と反応される。
店の人、「結構2階で食べてますよカレーラーメン」、と返す。
聞き耳を立てつつ、酔客に絡まれないように縮こまる。
2階。そういうのもあるのか。
メニュー上のカレーラーメンは微妙な位置で、650円だった。
だんだん、値段を見ただけでどういう形状のものがくるか、読めるようになってきている。この値段は、見た目が地味なタイプではないだろうか。
・・・そして想像通りのものが来る。醤油ラーメンカレーのせ。
カレー、豚肉と玉ねぎ、人参少々。あれ、豚肉が煮込まれてないやつだ。
つまり、カレーは注文後に作られている模様。
麺は硬めの縮れ麺で大変好み。おいしかった。

次に行こうとしていたのは、志村三丁目の吉村屋。

Yosimuraya

カレーラーメンがあり、しかも吉村だなんて、今回の目玉ではないだろうか。
しかも、出井川暗渠のすぐ隣なのだ。パーフェクト!
期待に胸を膨らませ、駅を降りる。
・・・と、高架下に並んでいるはずの店たちがなくなっていた。
地図を見ると、まだ載っている。食べログ閉店情報もまだ追い付いていなかった。
どうも、最近なくなってしまったようで・・・
しょんぼりしょんぼり、引き返した。

気を取り直して八軒目。板橋本町、一元。

Itigen

ネット上に情報はないものの、カレーラーメン大師匠のcurryyokoさんに聞いたもの。
実はここ、店構えが前から気になっていた。
綺麗にリフォームされた感があるが、以前はさぞかし雰囲気のある町中華であったろう。
カレーラーメン780円。
本当だ、メニューにあった!位置は真ん中あたり。
テーブルふたつ、カウンター2席の可愛らしい店内。
おばさんが1つ1つつくっている。アットホームさが最高潮。
半ラーメン付きメニュウもいいな。
麺は細め、しょうゆ、カレー後乗せ。
カレーは今作ったっぽい、厚切りの豚バラ肉、玉ねぎ、にんじん、グリンピース。
店の雰囲気と合った、やさしい味わいだった。

9軒目。本蓮沼、いわ井。

Iwai

注文後、すぐにメニューを下げられてしまった。
ワードの打ち出しっぽいメニュー表に、カレーラーメンは手書きで付け足してある。
カレーラーメン(辛口)、750円。
注文後、おじさんが勢いよく炒め始める。カレーから作り始めるようだ。
久しぶりの、麺埋もれタイプ(同じタイプの喜楽は距離的にも近い)。
具は、大きめの玉葱と大きめの豚バラ。
麺は中太縮れ、透明っぽいが硬めで好み。
が、あっつい。このタイプは熱いよ・・・
もやさまでも熱がっていたが、三村は普通に食べられるのだろう。
麺は少し多い気がする。お腹いっぱいになった。
お、胡椒がS&B!店内にはっきりS&Bがあるとうれしい。
器の下げも早い店だった…しかし写真を見直すと、このぴしっとした清潔感はどうだ。

10軒目。レストラン銀月。板橋本町。

Gingetu

清水稲荷の商店街、喜楽につづき2軒目である。
ここは、リサーチ時には引っかからなかった店だ。
しかし銀月は店構えが良すぎ、ナポリタンを食べに行ったら、カレーそば(注文後に気づいた)が堂々あったので再訪となった。
カレーそば600円、メニュー中腹にある。
近所の中高齢者で賑わう店内、最高。
着丼は早め。
醤油ラーメンによく煮込まれたカレー、グリンピース。
これまた新しいタイプ・・・カレーラーメン界のミートソースや。
ミートソースをくずさないように、大切に麺と絡めて食べる。優しく深いカレー。具は色々なものがとろけている。が、時折大きめの豚肉が出て来る。
麺は細めで透明感のあるタイプ。
近隣の2軒が汁無しタイプだったからここもかなと思っていたが、まるで違う。
中盤、カレーは勝手にスープと一体化していく。
第2形態に入った。
味は全て混ざっても薄め、でも悪くない。
最後、丼の底から具を拾う。人参や玉ねぎの破片を楽しむ。
他の客はほとんど定食ものを食べていた。お盆に洋風の皿、小鉢に味噌汁に。
嗚呼、昭和のレストラン、だなあ。

11軒目。下板橋。点心。

Tensin

谷端川が目の前である。
奥に座敷、あとはカウンターだが、もちろんカウンター入口近くに陣取る。暗渠を見るためにね。
古くていい感じの店構え。常連さんとお店のコミュニケーションも、いい。
清潔感もある。
カレーラーメン530円は、メニュー中盤にある。
ラーメン370円だと・・・!
カレーは器に入って保存されている、豚と玉ねぎと人参、角切りの具。
しょうゆラーメンにカレーあとがけ、その時に長ネギもプラスされる。
普通の太さのたまご麺、シンプル。うんうん。
黙々と食べながらメニューを凝視。オムライス、玉子焼きライス、目玉焼きライス、オムレツライス、が、別々に書いてある。値段も違う。・・・違いが知りたい。
しかしここ、最高の暗渠飯屋だな。

12軒目、成増。奥州軒。

Oushuken

駅南口からまっすぐ歩き、住宅街に入った先、奥まったところに出現する。
なぜこんなところに?と思うが、そうか、グラントハイツが近かったのか。
カレーソバ680円。メニュー中盤、焼きそばの後にある。
午後は休憩なしのようだが、明らかに休憩タイムの15時ちょい前に行ってしまった。
古き良き町中華。
隠れ家的位置なのがさらにいい。
電話がしばしばかかってきて、そのつど壁にメモが貼られる。出前かな?常連さんに愛されてるんだろうな。
着丼。カレーはあとがけタイプで、どろりと全面を覆う。
具はよく煮込まれた玉ねぎ、やや厚切りの豚肉。
麺は透明感のあるタイプ、細身だがバランスは良い。
ややしょっぱいか?・・・満足する塩っけとのギリギリのラインを攻めて来る。
後半に入ると、なんとアイスコーヒーのサービスがついてきた!
おばちゃんありがとう。ふと見るとおばちゃんは餃子を包んでいた。
嗚呼餃子もおいしそう・・・

さてさて、板橋区の町中華にいき、カレーラーメンを食べるだけの記事、ここまで読んでいただきありがとうございます。
もう少しだけ続き。

板橋だけで展開していた一人企画なもので、そんななか作り上げた仮説は、

1.板橋区は他区に比べてカレーラーメンを出す町中華が多い
2.メニューに新たに追加されている店舗が少なからずあり、それはS&Bのお膝元であることと関係がある(願望)

の2つ。

これを、カレーラーメン食いの第一人者、curryyokoさんに「どうでしょう!」と投げつけてみました。

すると・・・yokoさんは東京近郊の自らが食べ歩いたカレーラーメン一覧表を見せてくださいまして、

・板橋もあるほうだが、江戸川区、葛飾区、墨田区、台東区、それから大田区がカレーラーメンを出す店が多い
・カレーラーメンには町中華ありき
・町中華には工場ありき。なので、上記の区に多い
・S&Bとの関連についてはちょっとわからない

という、ことでした。
成る程。わたしの仮説1はまあアリとして、仮説2は違うのかも・・・

そしてyokoさんの表をもとに、23区のカレーラーメンを出す店データを整理してみると、
(あくまでもyokoさんの訪問店の数であり、完全なデータではありません。閉店しているものもありそうです。という注記をしつつ。)

カレーラーメン店を出す、かつ、町中華のお店上位は、

1位 大田区(38軒)
2位 葛飾区(34軒)
3位 墨田区(33軒)
4位 板橋区(28軒)
5位 江戸川区(27軒)

であり、下位は、

23位 目黒区(2軒)
22位 文京区(3軒)
21位 品川区(5軒)

でした。

さらに、カレーラーメンを出す店全体のうちの町中華率を上記の区で算出すると、

墨田区 89.2%(33/37)
葛飾区 85%(34/40)
江戸川区 79.4%(27/34)
板橋区 75.7%(28/37)
大田区 71.7%(38/53)

文京区 50%(3/6)
目黒区 28.6%(2/7)
品川区 27.8%(5/18)

(ちなみに杉並区は 12/18、66.7%で色々と中くらいでした。)

板橋区は、カレーラーメン的にも町中華的にも、1位ではないけれど上位にある。
ということが、データからはわかりました。

それから、食べ歩いた感想として、600円前後の安価なものが多く、なおかつ、麺が好みのケースがわりとあり、満足度が高いということ。
カレーラーメンがなくても他の町中華で惹かれるお店もしばしばあり、何度でも食べに行ってしまいそうです。

最後まで暗渠に触れない記事で、失礼いたしました。
次回からは暗渠に戻そうと思います。

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