桃園昨景 01
新シリーズ、「桃園昨景」というものをはじめてみようと思います。
暗渠のほとりには、古いものが遺されがちであると言いました。
けれど、その古いものたちは、古いからこそ、いつまでも残っているわけでもないのです。
先週まで、いや、つい昨日までそこにあったのに、失われた建物、失われた風景。暗渠を歩いていると、そういうものにときどき出会います。「嗚呼、せめてもっとちゃんと撮っておけばよかった」、そうつぶやくこともしばしば。
・・・ここでは、桃園川のほとりでひっそりと失われてしまったものたちを、不定期に、少しずつ載せてゆきたいと思います。
***
1回目は、馬橋稲荷神社支流(仮)沿いの、ある建物を。これはつい数日前の記録なので、速報でもあります。
馬橋稲荷神社支流(仮)とわたしとのお付き合いは、まさにこの空間から始まりました。
のほほんと歩いていたら、この空間が視界を掠めて。交差点なのに一角だけ妙に土地が余っていて、ちょっと違和感があるな、と、覗いてみたら秘密めいた路地があって、吸い込まれてみたら、
そこには神々しいコンクリ蓋暗渠があったのでした。
あのときの興奮は、いまでもよく覚えています。あの入口の、誰かの家に入っていくような不安感を伴う、狭くてカクカクとした路地がなければ、きっとあれほどには興奮しなかったし、この支流の発見はもっと遅くになっていたかもしれません(注:既に発見されている方々はいらっしゃる支流でした、が、その情報をまだ持っていなかったのでした。初心者時代のわたし)。
最初に撮ったときの写真も見つけたので載せてみましょう。
これこれ。あのときのわたし、ここを出たり入ったりして、だいぶキョドってたんじゃないかしら。
このいびつな形こそ川跡がもたらしたものであろうし、ここから入った後の空間のひらけ方は最高にすてきだった・・・
その場所を、先日通ったら。
入口を覆う家が、なくなっていました。
家がまだあった頃の、反対側からの写真。赤丸のところの建物です。
あまり、この家の写真は残っていないのです。馬橋稲荷支流(仮)の写真は何度も撮りに来たけれど、たいていは神社脇のコンクリ蓋や、埋もれかけの階段などばかりで。
そういえばこの入口の空間だって名所であるはずなのに。あまり、この家が無くなったらどうしよう、とは思っていなかったのかもしれない。なんとなく、この家はずっとあるような気がしてしまっていたのかもしれない。。
だから、これは、想像していなかった風景でした。
ここには新たな建物が建つのでしょう。きっと、セットバックでもともとの路地は広げられ、今度は馬橋稲荷支流(仮)は奥に隠れず、ここから見える状態になるでしょう。
考えてしまうと、ちょっとせつない。けれど仕方がないこと。だからせめて、記録に遺します。というかそれしかできないからなんだけど、またいつでも思い出せるように。
桃園昨景、なんだかせつないシリーズになってしまいそうな気もします。
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コメント
記事を読んで知りました。
異界への入り口めいた、不思議な空間でしたね。
なんとも残念です。
桃園昨景シリーズ、期待しております。
投稿: 翠月庵 | 2014年8月17日 (日) 13時07分
翠月庵さん。
つい先日のことでした。
大きな損失だと思います・・・
パトロール強化したいと思いますw
投稿: nama | 2014年8月18日 (月) 11時01分