宇治川は地下を流れていた
大阪は十三(じゅうそう)に行ってきました。
ええ、呑みに。
をんな二人で、しょんべん横丁。一軒目は雰囲気で選び、十三屋へ。
二軒目は同じ通りでハシゴしたんですが、、、既に酔っていていろいろと忘れてしまいました。
十三屋は予想通りたいへん良き大衆酒場で、盛り付けがうつくしかったりし、おいしくてコスパもよくてワクワクしました。「こういうメニューは関東にはナイヨ!」ってなものが何品かあったのですが、その後の記憶ごと失ってしまいました。料理写真も撮ってナイ・・・
その後、阪急電車にゆられて宿(=神戸)に帰ってきたんですが、恐ろしいことに終電なのに爆睡。知らないおばちゃんに知らない駅で起こされ。我ながらよく帰ってきたものだと思います。本能ってすごいや。
・・・じゃなくって。記事にしたいのは翌朝のことなんですよ。
神戸に行くと決まった時点で、どの暗渠を見るかを探し始めます。
今回白羽の矢が立ったのは、この窪地。
さて今回の旅では、どんなすがたの暗渠が、わたしを待っているでしょう?
・・・ワクワクもしますが、残念なことに、呑みすぎ&睡眠時間短めで、体調がアレです。予定よりも遅くまで寝てしまうし。出発地点と決めていたところまで、タクシー(ほんとうは街を味わうため避けたい)でいそぎます。
「大倉山駅のあたりまで」と告げ、こんなところにも大倉山!、と思っていると、車は急勾配の坂道を駆け上がっていきます。はは、タクシーで良かったわw
・・・すると、そこに待っていたのは、
水門・・・?
え・・・なにこの構造物??後ろには何があるのだろ?
山手幹線という大きい道路に向かう、威圧感たっぷりにそそり立つソレに、目が釘付けとなります。
・・・さあ、丹念にこの上を見て、それから、神戸は「パン」推しでもあるので、このあたりに2軒あるベーカリーのどちらかのパンを買って朝飯にでも・・・と、計画していたのに、上述の体調なもので、ここで一気にダメージがきます。うぅぅぅ腹が痛い・・・パンとか言ってられん・・・とにかく開いている店に入らなければ・・・!
と、あたりを見回したら、水門の斜向かいに喫茶店がありました。神様ありがとう。
その名は馬甲。イイ感じに渋い外見と内装です。
メニューも、サンドイッチにハンバーグ、ナポリタン、のようなわたし好みの感じで。
トーストのセットをたのみました。コーヒー、トースト、ハムエッグ、サラダ。
きれいな色使いだなー。さすがシャレオツ神戸。
そして、ぜんぶ美味い・・・よかったこのお店、アタリだった。ちゃんとパンに着地してるし。ありがとう神様。
などと、感心しながら食べていました。
お腹が落ち着くまで、少々時間をかけて待ってから、外に出ます。
宇治川、と書かれた欄干がすぐ脇にありました。向こう側にチラリと見える道路が、これから辿る暗渠です。
そう、あなたは「宇治川」さんと言うの。
今回、図書館等に寄っていないので、宇治川さんの細かい情報は持ちません。
少しネット上で見てみると、かつての地名が由来のようです。
むしろ、この川以外には名を遺していない地名であるとか。
宇治川といえば京都、と頭に浮かんでしまいますが、神戸にも古くから宇治という名があったようです。
というわけで、もうひとりの宇治川さんを、下ってゆきましょう。
スタートはココから。
しかし、いやぁこれはほんとうにすごい迫力。
裏に回ると、
なんだここ・・・!!
さらさらと流れ込む川の水。
仕方なさそうに生える草木たち。
枯れた色合いのコンクリート擁壁。
きっと理由があるのだろうけど、わたしにはわからないすべての形。
人の近づけない空間・・・しぃんとしている・・・広い・・・でかい・・・
まるで要塞・・・。
呆然と、しかし内面ではひどく興奮しながら、橋の上からこの場所をずーーーーっと見つめているわたしを、地元の方が不思議そうにチラ見しながら、通り過ぎていきます。
よくみると、傍らには中小河川宇治川改修工事と書かれたプレートがありました。
そしてここは、宇治川暗渠調整池である、ということがわかります。改修工事は昭和47年に行われたようで、そのときにこの不思議な構造物ができたのでした。暗渠化自体がそのときかどうかは、不明のまま(もしかすると、同時かもしれないけど)。
暗渠調整池。これまた、初めて耳にする名称です。
上流側を振り返ると、そこはふつうの開渠でした。拍子抜けするくらい、ふつうの。
地図上では、もっともっと山奥から宇治川は開渠でのびていて、水源は後方のどこかです。
ちなみに左手に見える山が「大倉山」。
はぁ、のっけからすごいものに出逢ってしまった。
監視塔のようなものの、下流側はこう。
突然、川はなくなります。
川の流れのように見紛う、ここにあったのはトンネルと人の道で、この下を宇治川が流れるようです。
つまりここが、暗渠の始点。
右側の歩道の盛り上がりが怪しいですが、どうやら暗渠はそっちじゃなくて道路の真ん中のようで。
蛇足ですが、左側に見える酒屋さん、ここは、角打ちの聖地だったようです・・・。参考。うわぁぁなんだって素晴らしい店があるんだろう暗渠沿いには。なんで朝行っちゃったんだろうココに。と、頭を抱えたのは3か月も経ってからのことw
宇治川さんの所在を知らせる目印は、道路の真ん中に鎮座していました。
コレです。
「あ、はい、わたしが宇治川です。」
下水のマンホールと区別されたコレは、この下を湧水由来の自然河川が流れることを意味し、そしてまた宇治川さんの名刺でもあるのでしょう。
暗渠の両側は商店街です。
こんな、すてきな市場を携えた。
そのまま暗渠を下ってゆこうと思っていたのですが、なんとなく市場の裏側に惹かれて、
なんとなく裏に回ってしまいました。
すると、そこにはわかりやすく暗渠が!
細いけれど、これはもう完全にそうだし、続きがあるようです。
嗚呼これは、遡らないといけない。
嗚呼これ、好きだなあ・・・
本流の宇治川の出で立ちもよかったけれど、この傍流らしきものも上物です。
宇治川は何流かあったのでしょうか。あるいはかつてはこっちだったのが、向こうに付け替えられたのか。
先ほどやってきた方角に、引き返してゆきます。
崖がぐっとせり出してきて、また表情が変わります。
と、”毎日市場”の裏手から飛び出してきた二匹の猫たちが、つかず離れずの絶妙な位置でわたしにアイコンタクトしてくるんです。ここで足止めを食らい・・・
さらに遡ると、すごい崖地帯。
どうなってんだここの地形。
その先、道路を渡ると今度は崖がなくなって、暗渠は歩道にちょこんとしてます。
追える限りの上流端。後方の赤いスロープのようなものの下も、流れが通っています。その先、道路の向こうでは見えなくなりました。水源は不明。
さてこの流れと出逢った地点から下流はどうか、と、戻ります。猫と遊びながらね。
最初に見つけた写真の下流はこう。宇治川本流と一本隣の道路との間を、こうやって抜けていきます。しかしワンブロック行くと、消失しました。
ちなみに、いま撮影したのはコレの上。
ちいさな暗渠を渡るためにつくられた、手づくり階段。
昨日一緒に飲んだ子は、こういうのがとても好きそうだったんだよな。一緒に上りたかった。
まあでも、すごくガタガタしますw
この後学会に参加する予定だったので、ヒールの靴にワンピースという身ごしらえ。この場所で興奮顔で写真を撮りまくっていて、通報とかされなくて良かった。
さて本流に戻ります。
メルカロード宇治川、と名のついた商店街。そう、もともと宇治川のほとりにあったお店がそのまま残っているそうで、川の名を冠した商店街。
すてきなお店がざっくざくでした(まだ開店前でしたが)。
宇治川が地下に潜らされたのは、きっと何度も氾濫したからではないかと思うのです。おそらく商店街のひとびとも、いろんな目に遭いながら、川とともに暮らしてきたのでしょう。
そして今でも、宇治川とともに暮らす。
なんだかそのことが、とても胸に沁みて。こんどは商店街が開いているときに、来てみたいものです。
商店街はココで終わり。阪急の線路の下を、宇治川は流れていきます。
(貨物が通るの待ち。)
現在地。
右端に開渠が表示されています。
ね、この場所、宇治川宇治川しているでしょう。
しかしその先、通りに呑まれてしまい、突然わかりにくくなります。海はもう少しなのに。
宇治川さんの名刺も見えなくなったなあ、ほんとにココでいいのかなあ、と思ったら、ツイッターにて、Pさんからの助け舟が!
弁天町一丁目と東川崎一丁目の間の弁天町側の歩道上に、お目当ての蓋がある、と!
写真まで見せていただきました。この位置にも宇治川マンホがあったのだそうです(Pさんの見せてくださった写真を拝借)。
マンホーラーの方って、蓋の場所をちゃんと記憶されていて、希少な蓋を見ただけで場所が特定できてしまうので、ほんとうに吃驚します。Pさん、どうもありがとうございました。
おそらく、見失ってからも宇治川さんは真っ直ぐ来るようです。
さて、それではついに終点部分を・・・
いつのまにか、雨がざあざあ降ってきました。旅先だったので傘を買う気が起きなくて、ずぶぬれになりながら海を目指しました。
見えてきましたね。
うわぁー、水門だ。
これは大きい・・・!
道の下を来た流れが、ここで右側にカーブしてきて、
ここから海に出る・・・
水門の下から、もよもよと水が出てくるのがわかりました。
宇治川さんの、終末部分。
もよもよ~・・・。
なんて独特な暗渠だったんだろう。振り返りながら、河口を見つめます。
もしも雨が降っていなかったなら、わたしはここにしばらく居続けたかもしれません・・・。
今回の行程です。
暗渠というと、地上に在った川を下水道化したものをまっさきに思い浮かべてしまいますが、この宇治川は、自然河川のまま埋められたもののようです。
そしておもしろいことに、神戸市中央区のwebを見ると、神戸にはほかにもこのような地下河川が、たくさんあることがわかります。興奮の”地下河川マップ”はコチラ。
他の地下河川にも、名刺的マンホール蓋があるのかしら?
他の暗渠のはじまりと終わりは、宇治川さんと似ているかしら?
神戸に行くたのしみが、また増えました。
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