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太田のおもいで

群馬県太田市。
今年は空いた時間を見つけては、ここに行っていました。
大切なひと、の、大切なひとのお見舞いのために。

もちろん目的はお見舞いなのだけど、わたしたちはいつでも、どこにいても、暗渠を探してしまうのです。

市内を歩いていると、用水路の暗渠のような細道が何本も並行に走っているのが気になります。

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このように、何らかの用水路暗渠(写真左端、なみなみ流れています)から分流しているもののようです。
こんなふうに暗渠感の強いものもあれば、

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道っぽいものもあります。

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これらの支用水路のもとになっているらしき流れは、太田市の端の方にある小さな山の麓をカーブしていきます。

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その山の上には、高山神社、なる神社がありました。
これは高山神社に向かう階段。・・・きっとむかしは開渠の上に、太鼓橋が架かっていたかもしれません。

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暗渠はちょっと蓋の雰囲気を変えて、高山神社の裏側に回っていくようです。

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分岐して、市内のほうに曲っていくものもあります。

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いつものことですがB級グルメも気になります。
太田のB級グルメは、・・・なんと、焼きそば。具もタレもふつう、何かが乗っているわけでもない、ふつうのソース焼きそば。
いいですね~この媚びない感じ。

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市内にいくつも、焼きそばを出す店があります。
富士重工などがある関係か、むかしから工員の方々に愛された焼きそばなのだそうです。質実剛健。もちろん美味しかった!
このお店はカドヤ食堂といい、様々なメニューのある定食屋さんでしたが、売り物のお総菜パックを3つも「サービスよ」と言って酒のつまみに出してくれる豪儀なお店でした。感謝。

ちなみに、隣の足利にいくと、ジャガイモがゴロゴロ入ったポテト入り焼きそばが名物。こちらにも足を延ばしましたが、「ポテト入り焼きそバーガー」など、太田をさらに上回る炭水化物攻めでした。

太田でわたしたちが遭遇したグルメは、これだけではありません。

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街中をはしる開渠。この下流で分岐させるために2筋になっています。

この開渠を追っていくと、

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川沿いにこんな店があります。

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だるま食堂

・・・ラーメン300円。チャシューメン・・・おお・・・。
山形名物のはずの冷やしラーメンも、ここには昔からあるような風情。
裏側にはカツライスなども載っています。ひっ、ヒレカツ丼が500円!

これは入らざるを得ません。

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中に入ると、地元のおじさんがラーメンをすすったり、ビールを飲んだり。草野球後のひとたちがぞろぞろ入ってきたり。近所の家族連れがきたり。
黒電話が現役で活躍中。
じつによい感じです。
一品料理もあり、目玉焼きがラーメンと同価格の300円でした。ワクワクするなあ。

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ラーメンにするぞ、と心に決めていたのですが、カレーラーメン400円にも惹かれてしまい、結局カレーラーメンにしました。この場合カレーの味も把握できるので一石二鳥なのですが、ただ、「ラーメン」よりも器が立派で・・・ラーメンの小ぶりでかわいらしい器も良かったなあ。

麺は幅広のちぢれ麺で、佐野ラーメンを思い出す味わいでした。

ほかにも色々、みどころがあって、帰りは色んな道を通りながら過ごしていました。

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太田に来るようになってしばらくしてから、ふとあることを思い出しました。

ある年の、8月。
家族が気に入っている山形のラーメン屋さんに、祖父と祖母を連れて行ったとき。
そのラーメン屋さんのあるあたりがかつて軍の練兵場だったということを、祖父が突然話し始めたのでした。練兵場では上官にしごかれ、たいそうつらかったと、顔をしかめながら。
普段はスーパーポジティブな祖父が、そんな風に話すのは、ほんとうに珍しいことでした。

何度も来ているはずのその店。祖父は、戦争の話を滅多にしない。
8月は、トリガーが多いのかもしれない・・・。

すると、その日は祖母も戦時中の話をしてくれたのでした。
祖母は、太田の軍需工場で働いていたのだそうです。
太田は平らな街で、かつ、少し掘ればすぐ水が湧いてしまうので防空壕を掘ることが出来なかった。だから、空襲が来るとその平地をただただ逃げなければならなくて、とてもとても怖かった・・・と。

祖母が太田の話をしてくれたのは、あとにもさきにもこの1回。
わたしは、この場所でつらそうにしている若い祖父のこと、太田の地を逃げ回る若い祖母のことを想像しました。そしてとても複雑な気持ちで、自分のラーメンと、それから祖母の残した味噌ラーメンを食べたのでした・・・

太田の軍需工場、というのは、おそらく富士重工のことでしょう。
最近は、業績が好調だというので太田市の飲食店とセットでTVに出ていることもしばしば。戦時中は中島飛行機で、軍用機を作っていたはずです。

実際に太田を歩いてみると、そこにあるのはのほほんとした平地でした。今では平穏そのもので・・・ここに、若い頃の祖母が居たのかぁ・・・

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もう少し、さんぽで体験したことを綴ります。

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太田駅前は再開発の予定があるのか、だだっぴろい空き地になっています。
その片隅に、古い商店街が残されていました。といっても、仕舞屋ばかりなのですが・・・

そこに、連れが発見したワンダー物件がありました。

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これがその、古い商店街なのですが・・・
廃屋かしら、と思って近づいていくと、

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鰻屋さんがありました。
ばりばり現役なご様子。しかも鰻高騰の折、値上げをせずに。

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メニューは、なぜか壁に直接書かれています。
「1ぴき」の調理法がなんなのか気になるところ。

我々が最初の客だったのか、入店するといろいろと声をかけられました。
お茶の間から出てきたような素朴な出で立ちのおばさんから、わりと強めに「たまには鰻の上にしてみては」と、鰻の上を勧められました。この日は太田に来るのが最後の日だったため、ちょっと気を大きくして上を頼んでしまいました。

すると、まず、大将から「飛び散るからこれをかけてね」と、新聞紙を渡されるのです。
新聞紙・・・?え?

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新聞紙をかけながら、大いにビビります。
鰻を食べるのに、いったい何が飛び散るというのか。

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すると、もうもうと焚かれた七輪がやってきます。机の上に、どーんと。

アッツ・・・ッ!

注:夏(7月)です。
注:クーラーはついていません。

これから何が始まるのか、恐怖心最高潮に達す。

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付きだしのようなものが出てきました。

白菜の漬物、ミニトマト、きゅうり、豆腐、そして茹でたそうめんに、醤油をかけたものです(泣)。

ちなみに、お椀は肝吸いではなく、味噌汁です。

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唐突に、捌かれた生の鰻が血みどろでやってきて(あまりの衝撃のため写真は自粛、まだ動いています)、これを七輪で焼くのだ、と。
手前のタレにつけて食べよ、と。
これは”鰻の地獄焼き”なんだから、火力が大事。火力が落ちてきたらこのパックを二人で協力して入れてください、と、燃料のパックを渡され・・・

あまりのことに、二人ともポカーンとしていたら、「言うことわかってる?」と確認されるしまつ。

鰻の上を頼んだのに、何故こんなことになっているのか・・・。上って、お重の中の鰻が少し多い、とかではないのですか。

わたしも連れもきっと同じ思いだったと思うのですが、あまり率直に私語ができる雰囲気ではなかったためモクモクと鰻を焼き、食べ続けました(連れはわたしが苦手とする肝も食べてくれましたが、あまりの衝撃ですべての味がわからなかったそうですw)。燃料パックを、網を持って協同で投入することも忘れませんでした。
わたしは関西風の、蒸さない鰻の方が好きなので、これは味的にはおいしいのではと思いました・・・思いましたが、味以外のいろんな要素がすごすぎて!

地獄焼きは2匹分あったので、もう色んな意味でおなかいっぱいになりました。
そんなタイミングで、

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うな重が登場。

どどーん。
2匹目・・・。もう食えな(ry

帰りがけ、歩道のところに鰻を捌いた跡と、地面に捨てられた鰻の骨を見かけました。あとでネットの評判をみたところ、猫が捌いた鰻を食べるという時期もあったそうで。このあまりのワイルドさに、最近始まった店なのかと思っていたら、なんとお店自体は創業100年以上みたいなのです・・・なんという独自の発展の仕方。

わたしたちはしばらく無口となり、数時間後に、「もう、しばらく鰻は食べなくていいね・・・」「うん・・・」と遠い目で言い合ったのでした・・・。
注:翌日にまるます家でうな丼を美味しい美味しいと食べました。

太田ワンダー、もう一軒続けます。

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市街地にて。銭湯のえんとつにはいつでも敏感です。

あ、銭湯だ、と思って近づいていくと、

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ん?
公衆トイレだったか。

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あれれれ・・・いや、銭湯なのかもしれないです。

でも銭湯の名もついていなければ、いろいろとわかりにくい。

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普通の家に見える・・・。
自分の知っている銭湯とは違いすぎます。

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駐車場から推測すると、高砂ゆ、というお風呂屋さんのようでした。

ここも、太田最後の日に、ぜひ行っておこうということで、営業時間に合わせて遅めに訪れました。

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わあ、300円。
中に入ると、3畳くらいの部屋にフィットネスのマシンが置いてある部屋があって、その隣にアットホームな脱衣所。お風呂は知る限りどんな銭湯よりも狭く、お客さんは全員知り合い同士、という感じでした。共同浴場、という言葉がしっくりきそう。

これはこれで、おもしろい体験でした。太田、ワンダー。

                        ***

わたしたちがお見舞いに行っていたさきのそのひとは、この後いのちが危ないというところまでいってしまいました。ところがその後回復され(奇跡というのは、こういうことなんじゃないかと思いました)、いまは別な場所で治療を続けています。
最初に会ったとき、そのひとはわたしに、たくさんの美味しい食べものをお土産にくださいました。けれど、何もすごいものをくれなくっても、何かをしてくれなくっても、ただ生きていてくれるだけで、いいと思うんです。別に何か面白いことをたくさん話すのでなくても、ただそこに居てくれて、会えるだけで、いいのだから。
その方の回復と、少しでも長生きしてくださることを、祈りながら暮らしています。

                         ***

今回の記事は、シリアスなのか、コミカルなのか、よくわからない入り混じったものであったと思います。でもそれは、わたしたちが太田で体験した実際の気持ちにとても近いものだと思っています。じつにいろんなことを感じ、考えながら、あの街を歩いていました。

転院されたいま、わたしたちが同じ用事で太田に行くことは、もう無いでしょう。
けれど、わたしたちはこれからもそのよくわからない入り混じったような気持ちで、太田のことを思い出すでしょう。いのちの尊さについて考え、感謝しながら。”鰻の上”について、苦笑いしながら・・・。

自然と入り混じるいろんな思いと思い出。これが、太田のおもいでです。

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コメント

こちらでははじめまして、カツ丼/Browny@R134 と申します。

川の跡、大衆食堂のソースやきそばとラーメン、鰻、銭湯、
いずれも日常の風景のすみっこにひっそりと佇んでいますが、
その土着的な、その土地にしかない、その土地にしかないかもしれない要素ですね。

そのまちの歴史や背景、人々の暮らしを見事に浮き上がらせてくれていると感じます。

旅のとき、土地の人と同じ目線で、まちを見て、歩いていると、
元々のその土地の人は気付かないかもしれないような、あるいは、忘れてしまったような、もうひとつの側面が見えてくるのでしょうか。

まちを見て、歩き、そういった、忘れかけたようなひとつひとつを紡いでゆくのは、その土地に対する敬意でもあると感じます。

投稿: Browny@R134 | 2013年8月15日 (木) 20時14分

>カツ丼/Browny@R134さん

お世話になっております。

そういえば、相方の地元にすごく良い感じの食堂があるのに(他の街だったら即入るような)、本人は特に気になっていないということがありました。もしかすると仰るように、「ヨソ者」目線だからこそ発揮されることがあるのかもしれませんね。

コメントを拝読していて、つながったものがあります。
実は、わたしにも今回の記事と似たようなことが以前ありまして、そのときはただただ行って帰ってくる日々。結果、わたしは北関東に2か所ほど、良い思い出のない街を作ってしまいました。町並みも地形も食堂も味わわず、記憶といえば病室の中だけで、いまでも街の名前を聞くとかなしくなってしまう、という。その街は全然悪くないし、きっと行けば必ず面白いものがあるはずですよね。だからそのことを思う時、仕方がなかったとはいえ、”わたしはその街になんだか失礼なことをしてしまったんじゃないか”と思ったりするのです。
その経験が、今回の行動につながっている気がします。これが、もしかするとコメント内の”敬意”と重なるものなのかもしれません。

自分のことばかりダラダラと書いてしまいましたが、良い刺激をいただけるコメントでした。ありがとうございました。

投稿: nama | 2013年8月20日 (火) 11時01分

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