Dっかい水門、Cちゃい水門
夜空の月を見上げると、かならず思い出すひとがいます。
それは、小学校のときの、理科の先生。
たぶん30代くらいだった、男の先生。
「上弦の月は、Dの形だから、これからDかく(でっかく)な~る。下弦の月は、Cの形だから、これからCさく(ちぃさく)な~る。」
と、教えてくれたひとです。
なぜかそのことだけを、今でも月を見るたびに思い出すのです。ほかにもたくさん教えてもらったことはあるはずなのに、なぜか。
***
ええと、今回の記事は、この前振りとはぜんぜん関係ありません。
水門跡のちょっとした小ネタです。「でっかい」「ちいさい」というワードを思い浮かべたとき、なんとなく月のことを考えたのでした。
そんなわけで、今回は大小の水門の、おはなし。
まずは、「Cちゃい水門」から。
溝の口駅で降ります。北口に出て東進すると、
にぎやかな商店街があります。
二ヶ領用水の分水、根方十三ヶ村堀がここを走っているらしいのですが、気配は感じませんね・・・わりと単調かつごちゃっとした道です。
そして、直進し続けイトーヨーカドーを過ぎたあたりで、それは出現します。
ガードレールに挟まれてゐる。
暗渠はゴミ捨て場になるのが川崎流。
「おもかじいっぱーい!」と言いながらクルクル回したくなりますねこれは!(※回しません。)
向かいにはお蕎麦屋さんがあるので、いい席に座れれば”暗渠水門めし”が出来るかもしれません。
その先、どうみても面白いことになってゆきますが、今回はここまで。
ちなみに、すぐそばには立ち飲み屋さんもありました。
一見持ち帰り焼鳥屋さんなのだけど、縄のれんのところから入って飲めるみたいです。これもばっちり根方十三ヶ村堀沿い。「うぉぉー、入りたい!入りたい!」と吸い寄せられまくりましたが、開店前だったことと、少し後に飲み会が控えていたので自重しました。
この水門跡、猫またぎさんが根方十三ヶ村堀の記事で紹介されていたものです。根方十三ヶ村堀および二ヶ領用水の解説、それからこの水路の少し前の写真については庵魚堂さんが詳しいです。
「水門跡」(というか水門か)が暗渠上にあるというだけでひどく驚きました。さらに、実はこの道をわたしは複数回通っていたはずなのでした。
だいぶ前になりますが、この辺に住んでいた友人宅に遊びに来た時(に、別な友人とペチャクチャ喋りながら)。それから、弟がこの辺に引っ越した時(に、ヨーカドーなどに買い物に来るため車を運転しながら)。
・・・ぜ~んぜん、気づいていなかったんです。
こんなに違和感のありすぎる暗渠サインなのに、どう見ても気になるものなのに。
暗渠に開眼する前のこと、とはいえ、人ってこんなにも変わるものかと、吃驚する話です。
***
つぎは、「Dっかい水門」。
こんどは、清澄白河で降ります。てくてく、てくてく。
仙台堀川に沿った道を歩いていくと、道路が盛り上がっているのがわかります。
盛り上がっている場所こそが、目指す川跡。
それは福富川というのですが・・・
どーん!!
さきほどの盛り上がっている地点にくると、突然左側にコレです。
どどぉぉーーん。
あ、はい、福富川公園、なんですね。吾輩は公園の門であると言っているんですね?
しかもこの公園、「木場の香り」というサブタイトルまでついています。
あ、旧姓は吉岡水門さん、だそうです。
クルーズじゃないとできない、”水門裏撮り”だってできます。
(橋裏好きの相方は、クルーズ時の水門裏撮りにたいそう興奮しておりました。)
福富川公園に入っていくと、水門の存在感は一気に隠れます。
福富川は、大横川から西に分流したもので、さらに南北に支川を伸ばしていました(T字型)。その福富川支川と仙台堀川の合流部に水門があったとみられます(その位置にあった水門を「福富川水門」と書いているものもあるので要検証)。
かつて「木場」だった場所は複数ありますが、ここもそのひとつ。昭和30年頃の福富川の写真を見ると、川にはごろごろ木が浮かび、材木を運ぶ業者さんが筏に乗ったすがたが写っていたりします。
福富川は昭和62年に埋め立てられ、福富川公園となりました。遊具が木製であることが、「木場の香り」なのでしょうか。公園では子どもたちがワイワイとザリガニ釣りをしていました。
近くにあった団地。
水門を模しているのでは・・・?と思わず言ってしまった、このカタチ。というか、こういう形のものを見るとなんでも水門に見えてしまった日でした。
このでっかい水門は、三土さんがムック本”水路をゆく”(右サイドバー”おススメ本”にもあります)にて紹介されていたものです。
このあたりの水路跡は大きめの運河の跡地で、親水公園になっているものばかり。親水公園ってあんまり触手が伸びないんだよね~・・・と、初訪時には思いっきり素通りした福富川支川でした。一部分だけそそくさと通る感じで。それが、こんな珍物件だったとは・・・。
どんなにおもしろくないと感じた川跡でも、一応端から端まで辿ってみましょうよという教訓でした。
***
さて、一応ゴハン。
溝の口駅前に戻ります。
水色部分が、根方十三ヶ村堀。さきほどのものの上流部分です。
手前側は植え込みになっていますが、写真奥はコンクリ蓋暗渠となってアーケードに入っていきます。そのアーケード内で蓋暗渠を見ながら焼鳥とおでんを食べた記事がコチラ。
右側の植え込みがその下流です。まさに駅をくぐらんとするところ。
その、向かいにあるお店デリーが今日のご飯処です(奥側のお店)。相方がちょっと気になっていたトコロであるようで・・・。ネット上の評判を見ても、愛好者が多そうなカレー屋(定食屋)さん。
はいよ、とりあえず瓶ビール。
黒くなったサンプル、手書きのメニュー表、このタイルの壁の感じにカウンター。・・・いいねぇ~~。
エビフライカレーにしました。
この皿・・・いいねぇ~~。
カレーソースが独特の粘度と味わいで、これはハマる人はハマるんだろうな~という感じ。雰囲気ともども、良きローカルグルメをいただいた気分でした。これも、暗渠めしでございます。
Dっかい水門に、Cちゃい水門。
暗渠をさんぽしていると、こんな珍物件に巡り合うことも、ごく稀にあったりします。
<参考文献>
イカロスMOOK「水路をゆく」
江東区教育委員会「江東区の川(堀)・道・乗り物の変遷と人々」
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コメント
こんにちわ。
ちっちゃい水門のハンドルは凄く回してみたくなりますね。ハンドルがあるのに回せない!!!欲求不満になりそうです。(笑)
ところでこの小さな水門の下にあろう暗渠は、実際にまだ生きているのですか? そこが気になってます。。。
投稿: 谷戸っ子 | 2013年5月21日 (火) 13時16分
>谷戸っ子さん
こんにちはー。
ちっちゃい水門、めっちゃ触りたくなる佇まいですよねww
この下に水が流れているかどうか、ですが・・・、根方十三ヶ村堀は久地の円筒分水から流れてくるのですが、その分水地点ではいまでも水が流れています。しかしこの堀の流末を確認していないので、今回紹介したような中間地点にも確実に水が流れているかどうかは、ちょっとわかりません。庵魚堂さんのサイトを見ると、数年前は溝の口駅付近の開渠に濁った水が在るので、今も流れているかもしれません。
さらに、水門があるということは分流先があるのでしょうけれど、その分流先に今も流れているのかどうか、というとそれはもっと謎になってしまいます。いつか、この辺りも丁寧に見ることが出来たらいいんですが・・・。
というわけであいまいな答えになってしまいました。
投稿: nama | 2013年5月21日 (火) 19時00分