マセ口川ピクニック
肌寒かったり、雨ふりだったり。そんな日が続きますが、春らしい記事をふたつ、書こうと思います。ひとつめは、暗渠と開渠のピクニックのおはなし。
行先は、調布にあるマセ口(ませぐち)川。
これが正式名ですが、最初に「ませろ」と読んでしまったため、またそのほうが呼びやすいため、わたしは普段は「ませろがわ」と呼んでいます。だから現地でも声に出して「ませろがわ」、と連呼するわけですが、それが聞こえてしまった地元の方がもどかしく思っているかどうかは、知りません。
以前、秋にマセ口川の水源を見に来たことがありました(ゲゲゲの湧水前編)。また別件で調布を歩いていたときにマセ口川の脇をたまたま通り、「春にピクニックに来たらよさそう!」と、思っていたのでした。
そして、待ちに待った春がやってきました。
マセ口川の水源は、都立農業高校神代農場の敷地内。普段は入ることができません。
その、水源のある谷戸はかつてまるまる池で、池の谷とも呼ばれていました。いまでも湧水が豊富で、おそろしく澄んだ水を使い、ワサビ、ニジマス、ヤマメなどが育てられています。
ここは農場のすぐ下流側で、ここなら普段から一般人が出入りできます。
農場内を流れる澄んだ水を思い出しながら、フェンスに近づいていくと・・・なんと、湧水がはみ出ているではありませんか。
きれい・・・。
そしてはみ出ていた湧水は、農場の田んぼを通ってくる流れとここで合わさり、一度地下の管渠におとされ、地面の下にくぐるようです。
でも、その落とされたすぐ先にも浅い凹みがあって、あちこちからじゅくじゅく、じゅくじゅくと水が湧いていました。
みごとな湿地。自然のままの姿です。
ここも”神代農場南側斜面”という、調布の湧水点のひとつとして挙げられています。
この、はみ出し湧水と、じゅくじゅく湿地がいっぺんに見られる場所に、自分たちだけが立っている。すてきなお庭に居るような・・・。まだ朝でしたが、あまりの気持ちの昂りに、おもわず、乾杯。(まだ咲いていませんでしたが、ここには桜の木まであるのです!)
この場所、豊水期に行かれたえいはちさんが記事にしていますが、やはり春とは水の量が違いますね(しかし暗渠写真の撮り方がものすごく被っていて、おもしろかったです)。
じゅくじゅく湿地のおわりには、橋のようなものがありました。
橋?の先で中央自動車道をくぐり、
出たところにまた、橋のようなものがありました。
その先は野草園です。
野草もすごいけど、ホタルもすごい。らしい。
野草園の池の中には孵りたてのおたまじゃくしがわんさか。
ホタルもすごいけど、アマガエルもすごい。っぽい。もう少し先の季節にも、来たいなあ・・・
で、ここで、野草園を流れる水路の、はじまりの場所(一応谷頭ぽい)から勢いよく水が出ているのを見、「あの水は、出すぎだよね・・・きっと湧水じゃないよね」みたいなことを思わずぼそりと言ったら、背後にいらした野草園の方が、敷地の外に湧水があると教えてくださいました。
その湧水はこんな感じで、高速道路の脇からひっそりと流れ出ていました。まあまあの水量。
もうひとつ、付近に”深大寺自然広場カタクリ群生地下”という湧水点があるらしいのですが・・・それは地面から滲出してまた浸透するものらしいんですが・・・どうやら現在枯れている模様。辛うじて、高速の下に一部じゅくじゅくしているところがありました。
池の谷の湧水、野草園のポンプアップらしき水、それからじわ~っと湧いている周辺の水を集めたマセ口川は、野草園の端っこでふたたび地下へもぐります。
暗渠になって、
田畑の横を通っています。
分水口があって、 農業用水として活躍していることがわかります。付近では、以前はこのように湧水が田んぼを潤す風景が多々あったそうですが、現在はこのマセ口川だけが、水田に利用される湧水の川です。
立派な橋で道路を渡ります。
去年、モヤさま調布の回のとき、ちょうどこの場所を3人が歩いていて、「マセロ川!!」とTVに向かって叫んだのでした。
マセ口川の暗渠はけっこう眉目秀麗。
幅広の蓋でゆっくりと曲ります。
突然ですが、ここで支流に話を振ります。
かに山。
かに山は、マセ口川のすぐ横にある山です。野草園付近のマセ口川に、サワガニがたくさんいたことが、名前の由来らしく。
このかに山、マセ口川のある谷から見ると山っぽいんですが、反対側から見ると平らな窪地で、地元の人は”テエラッコミ”と呼ぶこともあるそうです。そして、ここを深大寺用水の分流が下ってくるそうなのです。
深大寺用水がマセ口川へ分流する区間を書いたHONDAさんの記事、
かに山からマセ口川合流点まで追ったimakenpressさんの記事、
いずれも秀逸なので併せてご覧ください。
このへん、複数分流があるといわれますが、わたしはかに山以降を追ってみます。上の写真は、深大寺用水分流とかに山での湧水(”カニ山キャンプ場南側崖線”湧水点)が合わさるところだとimakenさんが推測していた場所、であるとわたしが推測した場所ですw
この場所ではH16年時点では豊富に湧水がみられたそうですが、H19年では枯れており、いまもこんな感じです。
かつては水がグイグイ流れていたであろう場所、から、
マセ口川のつくった谷の低地へとすすみ、ここから、
家々の間を縫って、
暗渠となったり開渠となったりしながら、ここにて合流。マセ口川かに山支流(仮)、とでも呼びましょうか。
本流に戻ります。
ここは、マセロ川のもっともイケメン部分。
おみごとなカーブ!
入る先は、柏野小学校のグラウンド。
この小学校、東はこのマセ口川のカーブ暗渠が入ってくるし、西隣は逆川(深大寺で湧いた水が流れてくるもの。北の川、とも)のコンクリ蓋暗渠がめっちゃ走ってるし、すごいんです。
マセ口川は小学校の南で道路を渡り、すぐに暗い地下から出てきます。
以前きたときには、ここで大人も子どももごった返し、ザリガニ釣りに興じていたのでした。
夏~秋あたりだったからか、水草が青々としていてきれいで、見惚れたものです。
このときは冬をやっと過ぎたあたりなので、残念ながら水草はくすみ、生物の気配はありませんでした。
こういう小さな橋で、数か月後には子どもがつり糸を垂らしてキャッキャするのでしょう。
それにしても、すぐそこで湧いた水はすばらしい。きらきらと美しい。
おおっ!
以前lotus62さんが暗渠の何に萌えるか、というのを飲み会で聞きまわっていたことがあるのですが、そのとき「カーブ」も挙がっていたと思います
暗渠であれ開渠であれ、辿っていてカーブがあると「おおっ!」と声を上げる確率、高くないでしょうか?
さんぽ中の犬が川に入り、じゃぶじゃぶ遊んでいたり。
と、のどかな景色続きだったのに、いきなりちょっと都会に出てきました。
ここらへんは、都会の残念区間。ゴミが多く水も濁っていました。
いまはこんなですが、かつてはここらへんも水田があり、マセ口川に沿う細い田んぼ→「細田」という字になったといいます。
マセ口川の最後の橋は、へっひり橋、といいます。
かつては土橋であり、”いちばん尻の橋”だから、だそう・・・
最後、湧水たちは穴に吸い込まれて、
じゃー!!
っと、野川に注ぎます。
つまり、この場所が今回のゴール地点。
ふーい、この場所も最高!
水が見える位置での乾杯、その2。こんどはロゼのスパークリングです。
そのまま川べりに陣取って、ランチといたしました。
生ハムとクレソンのバケットサンド、ガーリックチキンとアスパラのバケットサンド。
ミモレットとカマンベール。
合流口をながめたり、水を触ったり、野川や鳥を見たりしながら、ゆっくりと飲みました。橋を渡る老夫婦から、「あらぁ、良いことしてるわねぇ~」って声をかけてもらったり。・・・少し、眠くなったり。
ずっと、マセ口川の音を聞きながら・・・
今回の行程です。開渠は青点線、暗渠は水色点線にしています。現在も生きている湧水点は青丸、枯れた湧水点は水色丸。
マセ口川。別名は佐須用水、池の谷用水、など。小字に”マセ口”というものもあったそうですが、その由来は不明とされます。
謎に満ちた名前の、全長1.2kmのきれいな開渠に暗渠。残念ながら次第に水量が減少してきている、とはいいますが、流末の轟きはまだまだ心強いです。
きっともうすぐ、あたたかな日々。いちど、こんなピクニックでも、どうですか?
<参考文献>
調布市環境部環境政策課「調布市湧水調査 調査報告書H20年版」
調布市教育委員会「調布の古道・坂道・水路・橋」
NPO法人多摩川センター「市民がしらべた!歩いて触れて再発見!調布の自然」
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