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藍染川蛍沢支流(仮)と「あの大使館」

ちょっと間が空いてしまいましたが、谷田川・藍染川の再開でございます。

今回は、藍染川の蛍沢支流(仮)について。
千駄木あたりでは、藍染川はよみせ通りを流れていた、とされますが、その一本裏にも蛍沢という湿地帯があったといわれます。そこからの細流を追っていこうと思うんですが、話はもう少しだけヤヤコシイ。・・・千駄木で降りて、いちど日暮里方面に歩いていきます。

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夕やけだんだんあたり。

猫がうじゃうじゃ居た空き地に建物が建って、猫たちはどこにいったんだろうなと思っていたら、この日は4匹ほど階段脇で寝ていました。もっともっと居た猫たち、自分なりの新たな寝場所を見つけられたのでしょうか?

猫のまちとして紹介されやすいこの場所ですが、この写真の三角地帯にあるのは犬屋さん。むかしの写真では谷中ケンネル、と大きく書かれています。この三角の先っちょまでお店があったら、くもじいに紹介されたかも?w

今回の蛍沢支流(仮)、この階段の下にある谷中銀座のあたりから始まる、という説もあるのですが、どうももっと上流があるように思っています。
それは、以前藍染川桜酒マラソンをしたときに、大佐が教えてくれた道。(荒川区と台東区の)区界であること、道の隣に小さな崖が続くこと、そのまま蛍沢に注ぐこと・・・川跡とみなせる材料は複数あります。しかし、始点が特定できず、根拠となる資料がほぼ無いという弱点もあるので、本には(迷いましたが)流路は載せませんでした。今回は注意深く、その道から歩いていくことにしましょう。

谷中銀座からもっと北へ歩いていきます。

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支流より東側(日暮里側)を歩いていると、突然、こんなのが出てきて「うぉぉ!!!」っとなります。

遡ると、何軒かの玄関にこのタイプの道が枝分かれしており、残念ながら敷石のようでした。

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同じ路地にて。こんなマンホール注意の促し方、初めて見ましたよ。

スリスリ猫もいたし、なかなか楽しい、西日暮里三丁目の路地。

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さてさて、蛍沢支流(仮)の上流にあたると思われる道は、写真奥の方向です。こんなふうに少し段差がついて、少しだけ崖下にあります。

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こんなふうにクネクネもしています。

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・・・こんなふうに、両側よりも凹んでいます。

資料が乏しい、とさきほど書きましたが、実はこのあたりで、”崖から流れ出す清水を使ってビールを作ろうとした”人がいたというのです。
工場まで建てたものの、生産には至らなかったそうですが。この写真からは、少し左側の位置。ビールが作れなかったのは残念ですが、すでにここで、湧水の小川があったかもしれない、と考えることができる話です。

その、ビールを作ろうとした人は近藤利兵衛だといいます。近藤利兵衛とは、神谷バーの神谷傳兵衛と組んで、ハチブドー酒や電気ブランを広めたお人。・・・しかし神谷=製造、近藤=販売、と言われるので、近藤がここでビールを作ろうとしたというのが、本当かどうかまだちょっとモヤモヤ。谷中の工場に関する直接的な資料もまだ見つけられていません。

神谷バーに、電気ブラン。あれは良いものですね。心がちょっとだけ浅草に飛びかけましたが、谷中に戻して戻して。

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さて谷中銀座と交わります。
区界はここから左に折れ、日暮里駅へと向かいますが、暗渠らしき道はこちらへ続きます。

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地域誌谷中・根津・千駄木では、実はこの道の途中くらいから(この写真のまさに目の前あたりから)川跡表記が始まります。宗林寺(後述)の庭先が水源とされるためです。

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少し進んだところ。左手が宗林寺の裏口です。

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宗林寺表門にはこのように「ほたる沢」と書かれた石碑があって、湿地帯であったことを知らせてくれます。

この低湿地で育った蛍は、夏になるとたくさんたくさん夜空を舞ったそうです。これが藍染川の別称、「蛍川」の由来でもあるのでしょう。

蚊が多いので、蚊帳を吊って寝ると、その周りを蛍が飛んだりもしたのだそうです・・・。いまはもう見られない、むかしの夏の風景ですね。

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ただし流路とされるのはコチラの道、裏側であり、こんなふうにカクン!と曲がり、

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クランクに次ぐクランクです。

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このように道としては続くのですが、どうも流れはこの1つ前の写真で道を外れ、おそらくこの少しだけ左手を流れていたようです。

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その先は「初音湯のところを通り」という記述もあるのですが、初音湯は最早在りませんでした。たぶん、このあたりに在ったはず。
近デジで大正初期の地図を見ると、初音湯の位置に「草津温泉」と書いてあっておもしろかったです。

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少し行くと暗渠サインと見紛うような公園があります。防災倉庫(=暗渠サイン度高い)まで好い位置にあるので、最初わたしは1のように流れているのだと思っていました。しかしどうやら蛍沢支流(仮)はもう少し上を流れているようだということがわかり、じゃあ道幅が不自然(=暗渠サイン度高い)なことになっている2が流路だろう、と思い込みました。・・・ところが、古地図を見る限り、流れは3であるようなんです(道ナシ)。

なんとまあ、暗渠者を惑わせる支流なんだろう!

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その後もしばらく家に飲まれて出会えず、やっとここで。
写真手前にまたも不自然な路地があり、そこも怪しいと思っていたのですが、古地図でいえばコチラ側ではなく、矢印のあたりを通るようです。ここでは、防災倉庫=川跡、です。

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でも、倉庫の下流は家の中にまた入るので追いかけられず、

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迂回していると、あらまあソックリ双子ちゃん。

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最後、穴子で有名な乃池寿司店脇の駐車場の裏で、やっと顔を出します。
ここも斜めの区画でじゅうぶん怪しく、

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こんなふうに怪しいまんま、ここでよみせ通り=藍染川本流と合流します。
大島蕎麦店の裏。ここが蛍沢支流(仮)の河口ってことですね。

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昭和22年の航空写真(gooさんありがとうございます)も、見てみましょう。藍染川本流はすでに暗渠化されていますが、この蛍沢支流(仮)をむしろ、目で追うことができます。

この合流点のすぐ下流側にあるのが琵琶橋と、以前ご紹介した砺波。砺波のある角は、以前はスズランというカフェであり玉突き場であったそうです。砺波の前の道は狭く、じゅくじゅくしていてあまり通る気がしなかったとのこと・・・そしてへび道へ・・・。

以上、上流部と下流部はとくに、大佐にいろいろと教えて頂きました。ありがとうございました!

さて、ゴハン。

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乃池の寿司と迷いましたが、ここにしました。
その名も、「大使館」。藍染川マラソンのときも、一同の心をつかんだニクイやつ。

看板には「中華・喫茶」と、「coffee」って書いてあります。「カツライス」が光ります。・・・そもそも大使館ってww

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で、看板を別な角度から見ると「えっ」ってなります。ここは「スナック」でもあるらしい。
しかもコーヒーとか喫茶を謳う割にそういうメニューが書かれてないし・・・「らーめん」のフォントだけなんかすごいし。。まさか本当の中国大使館なのか・・・。

一体ここは、何屋なのか。
そんなふうにグイグイつかまれるわけです。

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昼過ぎの微妙な時間帯、誰もお客さんが入っていなかったけれど、思い切って一人でいってまいりましたよ!

メニュー。中華と懐かし洋食系ラインナップ。わたし(蟹好き)としては、かにピラフ、かにチャーハン、かにサラダ、かにスープ、かに玉・・・とあちこちに蟹が入っているので、思わず頼んでしまったのがかにチャーハン。(注:別に蟹推しの店ではない。)

昼ビーとともにいただきました。みっ・・・ミカンがデザートにつきました(嬉涙)。

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カニは、カニ缶とカニカマのダブル。ダブルできましたよ奥さん。
適度にパラリ、ふんわり、味付けよしの、最後のひと口までおいしいチャーハンでございました。・・・良い店じゃないかー!

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前も言いましたが、どうも谷田川・藍染川沿いでは濃い店に出会います。
ここも、気になってんですよね・・・JRムードの料理店、せとうち。入口に鉄グッズがざくざく置いてあって、すごくアレなので、逆にたいして鉄分の濃くないわたしなんかが入店できるのか・・・と思ってまだ入れていません。

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今回の行程です(yahooさんありがとうございます。上流部分は略。支流は谷中・根津・千駄木を参考にプロット)。実は大使館、蛍沢支流(仮)がすぐ後ろを流れていました。

江戸期の地図には蛍沢支流(仮)は載っていませんが、おそらくこの支流が境界になって田畑と寺社・住宅地とが分かれていました。現在は田畑がなくなってしまったので、水路跡がわかりにくくなってしまった、というわけです。明治、大正の地図を見ると、実はもうちょっと小さな水路が出入りする箇所もあるのですが、今はわかりづらいので省略。
このように、辿れる痕跡がほぼなく、難しい暗渠でした。しかし、そもそもここは湿地帯。もとは地面からジュクジュクと染み出た水が、何流にもなって適当に流れていた場所なのかもしれません。そう考えると、正確な流路を突き止めようとすること自体、無理があるのかもしれません。
だから、なぁんとなく、ここら辺が蛍沢。という言い方でもいいのかもしれません・・・。

藍染川川下り、そろそろ河口です。次回もまた、謎の多い支流に迫ります。

<参考文献>
石田良介「谷根千百景」
江戸東京重ね地図(CD-ROM)
近代デジタルライブラリー東京市及接続郡部地籍地図下卷(web)
「谷中・根津・千駄木 其の三」
「谷中・根津・千駄木 其の四」

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