« 暗渠めし 現代版三味線橋のひと休み | トップページ | 桃園川支流を歩く その46 馬橋弁天池からの流れ »

「ごみ水路水族館」と、桃園川水族館

すてきな絵本と出会いました。

【送料無料】ごみ水路水族館 [ 武田晋一 ]

【送料無料】ごみ水路水族館 [ 武田晋一 ]
価格:1,680円(税込、送料別)

ごみ水路水族館。
絵本でもあるけど、写真集でもあるかもしれない。

水路や川跡のことを探していて、たまたま引っかかったのでした。題名からしてそそられていましたが、ページをめくってみたら・・・

まず出てくるのが水路!しかも、あんまりきれいじゃない水路(むしろゴミだらけの汚い水路)。しかしそこに、実にいろいろの生物がいることにびっくりします。それは、まさにゴミ水路の水族館なのでした。

でも、話は「こ~んなに生き物がいるんですよ」だけでは終わらない。

著者は、この水路を物理的にも歴史的にも遡ってゆきます。舞台は九州なのだけど、東京周辺で起きてきたことと、似たようなことが起きていました。このゴミ水路は蓋をされなかったというだけで、これはまさに、東京の暗渠の歴史。・・・そして、水路に棲む外来生物について説明しながら、今のこと、これからのことにも、著者は思いを巡らせます。

最初に著者が出会った水路は、多くの人が「ドブ川」と呼ぶものではないかと思います。
その「ドブ川」を見ると思わず辿りたくなる人が、わたしの周囲にも何人もいるわけですが(湧水の小川もいいけれど、放置されたドブ川にも胸キュン)、この著者はなにかちょっと近いものがある方なのかもしれません。文章も、好きな感じだし。

それにしても、こういうアプローチでドブ川を取り上げ、みている人が、いるのだなあ。

                       ***

ドブ川、といえば。
たまたま、”「どぶ」考”という論考にも最近出会いました。

なぜ、わたしたちはああいった水路を「どぶ」と呼ぶようになったのか。それを、使用例や地名から探っているものです。

どぶは、「濁った(※1)」、「すべて(※2)」、「下水溝(※3)」といった意味で用いられてきた、ということ。地名では「土腐」「土浮」「道場」などがあり、かつて低湿地であった場所が多い、ということ。

※1 ただし大阪の「丼池(どぶいけ)」の由来はどぶろくのように濁っていたから、とも、池がドンブリ型であったから、ともいわれる。
※2 アンコウのどぶ汁は、アンコウのすべてを入れるから、という説のほか、汁が濁りどぶろくのように見えるから、という説もある。
※3 下水溝を指す方言は、ドブが変化したと考えられるドボス、ドブス、ドスボ、ドブチ、ドブソ、ドボソ、などがある。いっぽう、セセナギ、セシナゲ、ショショナギ、ショショナゲといった言葉もあり、これらは「せせなぎ(不浄水)」からきていると思われる。以上、石川県の方言より。

ということが、まとめられていました(というか、明快にまとまってはいないのでもやもや)。河川の呼び名然り、由来を探るのって難しい・・・。
なんとなく共通認識で「ああいうものは、ドブ、と言う」ということが、我々に根付いてきたのは、いったいどういう経緯だったのか・・・もう少し知りたい気もしますが、今回は迷宮入りとします。

さらなる「ドブ」考を推し進めたいひとは、俊六さんのドブ川雑記帳(いろんな角度で「ドブ」を見ておられます)をぜひご覧ください。

                      

                         ***

さて、「ごみ水路水族館」には、たくさんの種類の生物がいました。そのなかには、東京でも地元の方のお話に出てくるけど、「そんなに大きなの、本当にいたんかな?」と思っていたような魚もいて。

蓋をされる前の桃園川のことを、やっぱり思い浮かべるのです。
桃園川には、どのくらい生物がいたんだったっけ?手持ちの資料から、探ってみました。・・・残念ながら、写真には撮れないんだけれど。

メダカ、タナゴは比較的よく出てきます。
それから、フナ、キンギョ、コイ、ハヤ、カエル、タニシ。
クチボソ、ドジョウ、ウナギ、なんてのも。
それから、ホタル。

桃園川緑道を歩いていると、これらの生き物と出会えます。これらの生き物が泳いでいたすがたを、そしてそれをつかまえて遊ぶ子どもたち、愛でて和む大人たちを、想像して歩くこともあります。

                         ***

「ごみ水路水族館」の著者は、ほかにも水と地球の研究ノートというテーマで、

「町の中の泉」

「とける岩の洞くつ」

「木が生える沼」

「消えない水たまり」

などを書かれています。
「町の中の泉」、思わずポチりました。それから、「消えない水たまり」も、次に狙っています・・・。

別著者となりますが、去年いただいた、「たまがわ」も、すてきな絵本でした。

【送料無料】たまがわ [ 村松昭 ]

【送料無料】たまがわ [ 村松昭 ]
価格:1,470円(税込、送料別)

川や水路を出発点に、いろいろなことを考える絵本。

自分のために、子どものために、あるいは甥や姪のために、もしかしたらこれから生まれてくる子どものためにも、持っていてもいい絵本ではないかな、と思います。

<参考文献>
「天沼杉五物がたり」
「思い出 桃交会」
武田晋一「ごみ水路水族館」
福田寛允 「どぶ」考-その語源と由来を探る- 月刊下水道35(12), 56-61.
桃井二小「おぎくぼいまむかし」
「桃三」
「桃三 五十年の歩み」
森泰樹「杉並風土記 中巻」
矢嶋又次「荻窪の今昔と商店街之変遷」

|

« 暗渠めし 現代版三味線橋のひと休み | トップページ | 桃園川支流を歩く その46 馬橋弁天池からの流れ »

4 資料」カテゴリの記事

コメント

ドブの由来、実は私もはっきりわからなくてモヤモヤしてたんす。メッキの世界でも「亜鉛ドブ漬け」とか言いますし、わけわかんなかったのがこの記事でちょっと解明。
「ドブ」って、語感だけで汚い川を見事に表現してる気がします。「デベ」とか「ブックン」とか「ブベブモヘ」とか、ドブ以外でふさわしい語感を探したりするんですが、「ドブ」を超えるのはないですね・・・ご紹介ありがとうございました!

投稿: 大石俊六 | 2013年2月11日 (月) 00時32分

>大石俊六さん

わはは、亜鉛ドブ漬け・・・www 食べ物みたいですねww
いえいえ、解明、ぜんぜんできなくってペラペラの記事ですみません。「ブックン」とか結構いけてる感じがしますが、やっぱり「ドブ」の語感の凄いこと。「セセナギ」じゃあ全然印象が違いますもんね。でも、もともとの「ドブ」って今我々が思い描くようなものじゃなかったはずで、昭和2、30年代以降になって「ドブ」と今の我々の「ドブ」観が合致してくるのがなんだか不思議に思われるんです。・・・由来は本当に難しそうですね。論考の記述からは、どうも「どぶろく」を探るともう少しわかりそうな気もしているので、酒関係で(←得意)見てみようかな~・・・。

投稿: nama | 2013年2月12日 (火) 19時37分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ごみ水路水族館」と、桃園川水族館:

« 暗渠めし 現代版三味線橋のひと休み | トップページ | 桃園川支流を歩く その46 馬橋弁天池からの流れ »