桃園川支流を歩く その46 馬橋弁天池からの流れ
藍染川記事があと2本残っていますが、現地検証が不足しているため一旦桃園川に戻ります。
・・・「桃園川支流を歩く」を久しぶりに書けることに、我ながら興奮気味だったりします。今回は、丸の内線新高円寺駅周辺の人くらいしか喜ばないような、つまりJR高円寺駅周辺の人でさえ、ポカンとするような支流のこと。
正確にいえば、桃園川の孫支流かもしれません。
桃園川の最大支流、天保新堀用水に注ぎこむようなカタチの流れだからです。
そして、とても短い!始めに断っときますが、今回、すっごい短いです。
***
ある日、別な目的で住宅街を歩いていたところ、犬を散歩するおばさんが向こうに見えました。するとまもなく、犬が用を足し始めました。
・・・なんてことのない、光景。
わたしはボウッとしながら、「犬はさぁ~、トイレトイレ!とか慌てることがないんだろうな~。いいよなぁ・・・。」などと思い、何気なくその方向を見ていました・・・
・・・ら?
ん、なんかあの場所、変だ。
犬とおばさんに既にロックオンしてしまったので、尿を見に行く不審者だと思われないように、一度通り過ぎてそのブロックを一周してから、その場所を覗いてみました。
なんと。
開渠! ・・・これは、快挙!!
桃園川流域、とくにここらへんでは、開渠はとても珍しいのです。
この奥(始点は民家の中なので見えない)からきて、
ここを通り(右側の家の塀の曲り方、すごく不自然ですよね)、
このマンホールの辺りで天保新堀用水に合流するようです。
この写真の奥の地点がさきほどの合流点。
で、今立っている斜め後ろくらいに、弁天湯があるというわけ。
たったこれだけなんだけれど。現地で発見したときは、とても嬉しかったです。で、嬉しかったけれど、ただの側溝の名残かもしれない、とも思っていました。
家に帰り、ゼンリン住宅地図を見ながら地番を確認。
そこで、背筋がぶるっとします。この地番は、かつて弁天池があった、と言われる場所でした(過去記事)。
馬橋弁天池、もしくは、南弁天池(ここでは地名を取って、馬橋弁天池を採用)。
高円寺南3-12-5(or6)あたりに、かつて10坪ほどの池があったそうです。
池の西岸には檜の大木があり、その下から冷たい水がこんこんと湧き出、枯れることがなかったそうです。池の水は、雨乞いにも使われたといいます。
戦後、池は埋められ、弁財天の石碑は馬橋稲荷神社の水神社社前に遷されました。
付近には池らしい地形が見つけられないでいたので、今は何の名残もないものだと思っていました・・・。
けれど、これが多分そう。
この開渠は、馬橋弁天池の排水路、あるいは、馬橋弁天池そのものの名残かもしれません。池自体が無くなっても、水が湧く場所なのでこの開渠が残ったのかもしれません。
たしかに、よく見れば背後にはこのように緩やかに崖があります。
冒頭で天保新堀用水の支流、という表現をしましたが、この流れは天保新堀用水が掘削される以前から存在した、自然河川”弁天川”(※1)の支流であると言った方が良いかもしれません。また、この弁天川の流域に他に弁天を名乗る池は無いことを考えると(※2)、もしかすると、この池が弁天川の名の由来かもしれません。
※1 名称は要検証。当ブログでは石橋湧水路、石橋流水路とも書いてきました。
※2 始点を成宗弁天池と考えている文献も有るため、これも断言できない。要検証。
今回みたものは、こんな風に流れていたと思われます(gooさんありがとうございます)。
・・・関連する情報を、もうひとつ。それはこの場所から2ブロックほど隣のお話し。
近年建ったマンションの前に、謎の噴水?があります。K師匠いわく、これが馬橋弁天池をイメージしたモニュメントなんだそうです(と、師匠は地元の方から聞いたらしい)。
たしかに、玄関でもないこの場所に在ることがなんだか不思議だし、なぜか、だいぶ後方から水を循環させています。誰にも見えないようなあの位置から始める必要性はなんなのか・・・なんだか、思わせぶりですw
そのマンションのお向かいにあるのが、高円寺保健センター(旧・東保健所)。
ここもまた、天保新堀用水(このへんでは2~3流に分かれていた)の流路沿いであり、
昭和38年の航空写真をみてみると(gooさんありがとうございます)、ちょうどこの保健センターの脇にハシゴ式開渠のようなものがあります(kazuyank(なかざわ)さま、教えてくださりありがとうございました)。
このハシゴ式開渠らしきもの、眺め続けていると「もしかしたら植え込みなのかも・・・」と自信が無くなってくるのですが、大丈夫。天保新堀用水の傍流は、東保健所(現・保健センター)の裏を通っていた、と記している文献がちゃあんとありました。
その、ハシゴ式で水路が通っていた場所は、いまはこんな感じです。
この土地の余り方、自転車置き場・・・。暗渠サインですねぇ。
そしてこの水路、さきほどの馬橋弁天池から、ちょうど水が下ってきた位置にあるのでした。
つまり、こんなふうに推測することも出来るのです。天保新堀用水の傍流は、「馬橋弁天池に接し」て流れていたともいわれます。馬橋弁天池から下流は、緑点線のように流れていた時期があるのでしょう。上流部分は、住宅地の中でいまひとつわかりません。
前掲の地図とは違う方向です。傍流が先に埋め立てられたため、水路が付け替えられたのかもしれません。
それから、それから。
この高円寺保健センターの付近には、かつて釣堀があったそうなんです。
水路の氾濫時には、コイやフナが流れ出た、という・・・。場所は特定できていませんが、実はここらへん、池だらけ・・・!用水路も何本もあるし・・・水だらけの土地だったのですね。
さて、ゴハン。
近くにお気に入りの喫茶店があります。
たぶん、有名店。七つ森。宮沢賢治好きのわたしの心を鷲掴みにして離さない喫茶店。
雰囲気も独特で大好きですが、お料理もまた独特。これは、オムライス。なんですが、どう嗅いでもキンピラの匂いしかしませんw
食後にはいちごのババロアとアイスコーヒー。
「ババロア」って最近あんまり見ない気がします。
菓子は定番のほか日替わりのものがあるのですが、この日は無かったけれど「抹茶ババロア」はいかにもババロア!という形と、お皿ででてきて非常に好きでした。
それから、「ゴルゴンゾーラのチーズケーキ」。これが赤ワインと実に合う逸品で、一度しか出会いませんでしたが日々の肴にしたいので定番化を強く望みます。
菓子メニューはこんなふうに手作りで張り替えられます。このかわいさ・・・丁寧に描かれ、貼られ、刺しゅうされ・・・。ぜんたいにそのような、心のこもった素敵なお店。
学生のとき、ときどきここに勉強しに来たりしていました。あまり集中はできなかったけれど。
***
さて。今回の行程。
主要部分については、だいぶ理解が進んできた桃園川。これからはちまちまと、こんなふうにちいさなパーツをはめ込む作業を時折続けていきたいと思います。
嗚呼、犬に感謝。です。
<参考文献>
「高円寺、村から街へ」
森泰樹「杉並風土記 中巻」
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