蕎麦窪で蕎麦をたぐる
新蕎麦の季節ですねぇ。
蕎麦といえば、馬橋村の絵図に”蕎麦窪”と書かれた場所があります。窪という名が示すように、蕎麦窪には水路=天保新堀用水が流れていました。
天保新堀用水は、馬橋村にもともとあった自然流が、天保10年の飢饉で枯れてしまったため、善福寺川から取水した人工水路とつなげたもの。その、もともとあった水路の記述にも、「そば窪から二派に分かれて東流」というものがみられます。
絵図から現在の場所を推測することは難しかろうと思いつつ、蕎麦窪に行ってみたいと思います。
天保新堀用水を、青梅街道の北から下っていきます。
阿佐ヶ谷にしはら公園。
おそらく蕎麦窪はここらへんのことかな、と思っています。
公園よりも下流で、天保新堀用水は二流に分かれるようでしたので・・・。
その話は、過去(桃園川支流を歩く その37馬橋川たち②)にも触れています。このあたりは「たかっつる」という通称の水田地帯だったので、田圃のために水路が用・排水の2流あったのかもしれません。
暗渠としてはっきりと残ったのはこちらの、金太郎のいる流路のみ。この先は桃園川合流地点へと北上していきます。
さて。この蕎麦窪という場所の存在を知って、真っ先にわたしが思ったことは、
「ここで蕎麦を食べたい。」
コレ。
コンビニなどの蕎麦を買ってきて公園で食べるか、蕎麦焼酎のお湯割りをここで飲んでお茶を濁すか・・・。あれこれ考えた末、「新蕎麦の季節に、最寄りの蕎麦屋で食べよう。」という最も安全な結論にたどりつきました。
蕎麦窪上に蕎麦屋さんがあれば理想的だったのですが、そうもうまくはいかない。最寄、と思われるものは2軒あったのですが、こちらの店に行くことにしました。
豊年屋。
青梅街道沿い、南阿佐ヶ谷駅のすぐ近くです。
ここは天保新堀用水沿いでもないし、窪地でもないけれど、青梅街道のそばなんで。。
ちょっと疲れていたので、とろろそばを頼みました。
町の蕎麦屋さん的な味でしたが、天ぷらをつけなかったというのに結構な満足感でした。(わたしは蕎麦推しの県に生まれておきながら、長年「天ぷらをつけないと麺類は食べられない(単調すぎて)」という微妙なひとだったのです。。)
丼ものの種類も豊富で、それぞれに蕎麦のセットがあったので、よく食べる客層なんでしょうか。
後ろに座った男性たちは、酒とそのつまみを次々頼んでいました・・・わたしはその後仕事があったので頼めず・・・くぅぅ、良いなあ。定食屋さんや酒場のにおいもする蕎麦屋さんでした。
ってことで、蕎麦窪のそばで食べたぞ、新蕎麦!
位置関係は以下のとおりです。
・・・じつはこの話には悲しいオチがありまして。
どうやら蕎麦窪の名の由来は、”青梅街道のそば(傍)の窪地であるから”のようなのです。しばらくの間、”蕎麦が採れたので蕎麦窪”なのだと思っていたのですが、そのような説はまだ見かけていません。
さぞ芋が採れたのかと思った芋窪は”いの窪”からきているというし、蟹ヶ谷は沢蟹がいた以外の説のほうが説得的だったりします。食べ物地名に行くと、すぐさま「ここで○○が採れたんだね!」と思う癖を、そろそろ脱しなければいけません。。
もうひとつ、蕎麦がらみで今やりたいと思っていることは、古川沿いの”狸蕎麦”という旧地名の場所(狸橋付近)で、たぬきそばを食べること。
蕎麦を売ったときの代金を翌朝見ると木の葉だった、などという伝承からついた地名のようで、江戸期の地図には”狸蕎麦”という地名が書かれています。古川に架かる狸橋の名の由来ともなっています。・・・と、HONDAさんが以前書かれていることを今知りましたw。麻布七不思議のひとつとされ、こんなふうにまとめて下さっているサイトもあります。狸そば水車、なんてのもあったのですねぇ~~。
つまり、狸蕎麦はちゃんと”蕎麦”から来ている地名なわけです。福沢諭吉が蕎麦を食べに来ていた、などと、蕎麦屋さんもあった模様。今はどうなっているのでしょうか?
・・・さて、狸橋近くの蕎麦屋さんを探さないと。
※「地産地消」カテゴリを新設しました。
<参考文献>
森泰樹「杉並風土記 中巻」
「武蔵国多摩郡 馬橋村史」
「増補 港区近代沿革図集」
| 固定リンク
「1-1 さんぽ:桃園川」カテゴリの記事
- 失われた桃園橋のこと(2021.08.14)
- プチ天保新堀用水ブーム、きたる (1)(2020.06.04)
- 阿佐ヶ谷暗渠マップ作成に協力しました(2020.05.06)
- さらなる天神川のこと(2018.08.03)
- 散歩の達人「中野・高円寺・阿佐ヶ谷」号に寄稿しました(2018.07.03)
「3-8 特集:地産地消」カテゴリの記事
- 狸蕎麦でたぬきそばをたぐる(2014.03.26)
- 桃園川支流を歩く その49 生民軒牧場支流(仮)と区有牛のはなし(2013.10.01)
- 蒟蒻島で蒟蒻を食べる(2013.03.05)
- 蕎麦窪で蕎麦をたぐる(2012.11.09)
- カニの谷の鉄塔(2012.08.03)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
とっても面白かったです!
さすがですね。
こちらのお蕎麦はボリュームがあってよさそうですね~
ワシは蕎麦と天ぷら頼むと蕎麦だけ夢中で先に食いきって天ぷらだけ残っちゃって呆然とすることが度々あります。
投稿: 大佐 | 2012年11月13日 (火) 16時43分
>大佐さん
「さん」つけるとなんか違和感が・・・w
どうもありがとうございます。
「こ、これだけ??」って少ない盛りの蕎麦屋さんが時々ありますが、ここはあっぱれでした。
天ぷら残しちゃうんですか。吃驚。でもそれほど蕎麦がお好きなんですね。記事内に書いたように、わたしにとって天ぷらは長年、蕎麦を飽きずに食べきるための必須アイテムでしたから、常に意識してましたねぇ・・・。
投稿: nama | 2012年11月13日 (火) 17時28分
もちろん「さん」は要らないですよ~
あ、天ぷらは残さないです。
呆然としたあと、ちゃんと食べますw
投稿: 大佐 | 2012年11月13日 (火) 19時07分
>大佐
あ、そうですよねw 最終的には食べますよねw
投稿: nama | 2012年11月13日 (火) 19時17分