富久町のその後
紅葉川のねちねち歩きをしていたとき、水源をもとめて、訪れていた富久町(”四ツ谷と富久町の水源”)。そこには立ち退きによる歯抜けとなった、風前の灯のような住宅地と、それにより露わになったスリバチ地形と、神秘的な不動尊がありました。
風前の灯のような、とは思ったけれど、でも、そこにある新しめのアパートや、まだまだ生活感のある家を見ると、ここが消えるのはそんなにすぐではないのじゃないか、とも思っていました。いや、そのように「思いたかった」だけなのかもしれません。
年末年始に足を折り、タクシー通勤をせざるを得なかったとき、富久町の前をかなりの確率で通っていました。そして、そのとき初めて、富久町の工事がかなり進んでいるらしいことに気づきました。
けれど、この折れた足で富久町を歩き回ることは出来ないし。・・・かなり悶々としていたことを覚えています。
その後、またも時間が経ってしまいましたが、先日やっと足を運んできました。
新宿御苑で降り、北上します。
まもなく、工事のため囲われたエリアが出てきます。クリーニング屋さんの看板だけが残っていたり。
左側には、行列用の椅子が置かれたラーメン屋さんがあって、だいぶ気を取られました。
富久町に限らず、紅葉川近辺ではあちこちで道路がつくられかけているので、この工事エリアが今日目指しているものなのか、否か、気づくのに少し時間がかかりました。
足もとが右に向かって傾斜しているのを見、あの窪地の近くにいるかもしれないということにやっと気づきます。
ああ・・・。
思ったよりも、ずっと工事は進んでいるかもしれない。この裏側に谷頭があるのだけど、裏側には行けないことを悟ります。
1枚前の写真の角にある、小さく、古びた良い感じの焼鳥屋さんも閉店していました。入ることにためらいを覚えながらも、とても気になっていた店だったのですが。
このあたりに、古いマンションがあって、裏側から見るとやたら階段が飛び出ていて面白いなと思っていました。
とすると・・・水源に在った清滝不動尊は?どこへいったんだろう??
道路沿いに遷ってきてました。
でもこの並びのお店も立ち退き始めているため、この場所にずっと居られるものなのか、どうか。
それにしても、急激に行程が進んだ感があります。都市再生緊急整備地域・・・。てっきり、道路ができるのだと思っていましたが、土壌汚染が理由のようです。新宿区のサイト。現場には「土壌汚染対策工事」とあり、項目としては「鉛」と書かれていました。
柵の上に手を伸ばし、中をパシャリ。富久町の湧水が見えます。再開発後は、ここに湧いていた水のイメージをたのしむことは、もう出来ないんだろうな。
・・・。
現場の大きさも大規模ですが、このプレハブもずいぶん大きいです。
再開発後、こぉんなビルが、建つんだそうです。
そういえばここには、雨の日とか、夜とか、あまり眺めの良くないタイミングでばかり来ていた気がします。夕暮れにきたとき、子どもが遊んでいた公園がこの左手にありました。
ドギャーンとか言っていた崖は、東側だけ残っていました。横倉の壁のようだと言った滑り台は、跡形もなく。
古めの階段が日なたぼっこ中。これは、残るのかなあ・・・?
以前、牧場跡の近くに牧場関係出木杉くんエリアがあると書いていましたが、そのエリアも富久町に隣接していました。その一つであるハンバーガー屋さんは、ぎりぎり残っていました。
良いなと思っていた場所が失われてしまうことは、たびたびあります。再開発を反対まではしないし、復活させろとまでも思わないし、・・・暗渠趣味はある意味失われたものを想像してたのしむ部分もあるし。
それでも、今回のような変貌に出くわしてしまうと、喪失感や無力感は少なからずあるし、それを「仕方のないことなんだ」と思うようにしている、といった感じです。嗚呼写真をもっと撮っておけば良かったといった後悔をするのも、いつものこと。
帰り道に遭遇した、こんな風景(電線にかかっているのは薔薇です)。
こんな風景も、いつのまにかなくなってしまうのでしょうか。
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コメント
富久町…。土地の移り変わりについては、なるべく「そのまんまとにかく受け入れる」ようにしているんですが、やっぱりどうにも不思議な気持ちになってしまいますねえ。
投稿: lotus62 | 2012年5月29日 (火) 09時10分
>lotus62さん
わたしもそういうスタンスでいるつもりなのですが、でも、知っている(かつ、気に入っている)何かを失うことは心が揺れはしますね。次に出来るものが、あまり好きになれなさそうっていうこともありますかねぇ。もしあそこに、牧場でもできるんだったら、もっと違う気持ちだっただろうな~・・・w
投稿: nama | 2012年5月29日 (火) 17時07分