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紅葉川をねちねちと歩く その13 河口近辺とまとめ

紅葉川編、そろそろ終わります。
この川に関しては、杉並でもないのに、ずいぶん時間をかけてねちねちやってきたものです。もともとは、わたしの非常勤先(院生の頃からやらせていただき、結構長くお世話になったところ)が紅葉川下流沿いであったため、愛着のあった暗渠でした。そして、少し歩いてみると、その支流たちの表情の豊かさ、歴史の複雑さにヤラれてしまい、13記事も書く羽目になりました。
・・・その非常勤先を、ついにこの3月で辞めることになりました。紅葉川沿いに頻繁に行くことも、なくなるでしょう。この非常勤先と、そこで出会ったたくさんの人たちへの感謝の心をこめて、紅葉川河口近辺のことを書いてゆこうと思います。

外濠が途切れる位置に、以前はマクドナルドがありましたが、今は跡地にカナルカフェブティックという店が出来ています。その前の交差点(というか飯田橋駅前の交差点)には、連続麻雀杯マンホールがあります。

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つまり、下水が交差しているはずなんですが・・・。なぜか、ナナメ。で、一個しかない(交差しているときには2つあることが多いんです、lotus氏の解説参照)。
向きからして、外濠の排水かしらんとも思ったけれど、下水道台帳を見ると、どうやらここは交差ではなく、市ヶ谷幹線の片割れが直角に曲がっている位置でした。連続麻雀杯マンホールの役割はゴミが溜まりやすい場所のお掃除ですから、この下水管が直角に曲がる場所だって該当するわけです。

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その交差点を過ぎると、紅葉川沿いにはこんなすてきな食べ物屋さんが立ち並びます。

ジャンボ餃子で有名な、神楽坂飯店。一升チャーハンや、百ヶ餃子だってありますよ。
それから、ラーメンえぞ松。よく知らずに入ったら、皆がホイコーローを食べていたので、つられて食べました。建物上部にもずいぶん強調してホイコーロって書いてありますねw
山形の地酒の店は知らなかったなぁ。インドールもステーキも実は未食です。・・・しかし、いい眺めだなぁ。

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その向かいには、ラムラのビルがそびえたつ。
下水道台帳を見ると、ラムラのあたりには「外濠」と記されていて、キュンとします。外濠の水が暗渠になって前を流れているのです。

ラムラは、もともとあった外濠を埋めて建てられたものです。
付近を新宿区地震ハザードマップで見ると、新宿区で唯一「液状化の発生可能性が高い地域」となっています。ラムラの位置はもちろん、隣のカナルカフェ付近やラムラ北西の道路・商業用地も含まれており、この辺りに大がかりな埋め立てがあったことが物語られます。それは直接的には外濠ですが、もっともっと以前から、ここは水っけのある、ぐじょぐじょした土地だったのでしょう・・・この場所は川の合流地点であるため、水があふれることが多く、昔は自然の遊水池があったといわれます。

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ラムラの前には、親水ゾーンがあります。
これは川のふりでしょうか、外濠のふりでしょうか。

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ここもラムラの向かいですが、さっきからちょっと下った位置です。
見えている坂は、軽子坂。ここは、揚場町という地名が示すように、川から船荷を揚げる場所でした。荷揚げをする人のことを軽子といい、軽子が通っていたから(或いは住んでいたとする文献も有)軽子坂というそうです。
そして、ちょうどこの軽子坂の下(横断歩道の辺り)に、無名の石橋が架けられていました。紅葉川(と便宜上書きますが下流部=大下水との表記です)を渡るための石橋です。水路の幅は1.8mで、7枚の石からなる石橋だったそうです。横断歩道のシマシマが、石橋に見えてきませんか・・・?

あとはもうすぐ、河口です。

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これがおそらく、神田川との合流口。船河原橋のところにあります。
この合流口は神田川クルーズ(2回目は水位が高く、階段ぶりがわからなかったので1回目の写真を採用)の際に間近で見ており、内部に階段のあるようなつくりが気になっていました。今でも謎が解けたわけではないですが、白汚零さんの下水道写真が参考になるような気がしています。下水道内では、合流部にこのような階段を作ることがしばしばあり、それは水勢によるコンクリートの摩耗を防ぐ目的があるのだそうです。・・・つまり、この合流口、以前はかなり水量があったと考えることも出来るわけです。

ちなみに、船河原橋は「とんど橋」という別名を持っています。この下に水堰の捨石があり、水音が高く「とんど」と響くため、という由来です。「どんどん」を見かけることは多いですが、「とんど」ってちょっとおもしろいw たしかにちょっと音が高そう。

・・・さて、河口まで来たので、紅葉川辿りはこれにて終了。最後、名称等について少々まとめておきます。

紅葉川はさまざまな名前を持っていて、風流なものが多いです。

全体をさす名称として、「紅葉川」「楓川」「長延寺川」「外濠川」などがみられます。
上流部分は「桜川」「捨川」など。
下流部分は「大下水」「柳川」「長延寺川」などで、大下水のことを「紅葉堀」とする資料もあります。紅葉堀は(おそらく紅葉川を参照して)便宜的につけられただけの様子。
上流・下流の境目はどうやら防衛省のあたりになるようです。
あれこれありますが、手持ちの資料では「紅葉川」と呼ぶものが比較的多いです。

このうち、由来について記されたものは、川沿いに柳が植えられていたため、とされる「柳川」のみ。・・・いやはや川の名称の由来って、探すの難しいですね。

また、流路について、新しい情報を得ました。以前、「外濠との関係」にて、紅葉川の歴史について曖昧なまま終わりましたが、その後「紅葉堀」に関する資料を通し、ひとまずは答えが出た形です。

「紅葉堀」は、前出の軽子坂にて、昭和62年に配電線地中化工事中に見つかった遺構です。江戸期の下水施設にあたることが判明し、さらに、”1641年に堀千之助に命じて作らせた石垣積み下水堀”ということまでわかっています。
蓋は無く、大久保方向からの落水と四ツ谷近辺の上水・悪水を流す下水が、市ヶ谷八幡宮付近で一本化され、それらの水を神田川に流すための水路ということです(この流路はまさしく紅葉川です)。

さらに、この紅葉堀は、もともとあった自然河川である紅葉川を整備して下水道にしたものといわれます。江戸では、こんな風に、宅地化のために自然河川を大下水に整備し直す例がいくつかあるようです。

紅葉川の谷に作られた2つの水路、外濠と紅葉堀(大下水)について、どちらが自然河川としての紅葉川を濃く継承しているのか、というと、今回の調べでは紅葉堀に軍配が上がるわけです。

ただし、江戸期の遺跡調査によれば、玉川上水や大下水の余水が外濠に流入していた形跡がみられ、上水・下水・外濠はところどころで繋がっていたといえます(江戸期の下水は屎尿を含まないので、汚い話ではありません)。したがって、紅葉堀の余水の流入口が、外濠のどこかにあった(=紅葉堀と外濠が繋がっていた)可能性は低くありません。
呼称が上流と下流で分かれる場合があることは前述のとおりですが、紅葉川を2つの別々の川として記述している資料もあります。それが最初は不思議に感じられましたが、たとえばこの記事の最後から2枚目の写真のような、大きい合流口は、もしかすると紅葉堀の余水を大量に流すところで、あたかも上流部の河口のように見えた、かも、しれません。。ちょっと自信ないけど、そんな風にも考えられると思います。

紅葉堀の発掘調査により、紅葉堀の遺構には現在ヒューム管が通っていることもわかりました。つまり、江戸期に掘られたこの下水路は、今も下水道として利用されているのです!古く、そして紆余曲折の歴史を持つ紅葉川。その名残は、いまもしっかりと地中にあるのでした。

・・・最後までねちねちと書いてしまいましたが、そろそろ打ち上げにまいります。食べ物屋さんも、とっておきを紹介したいと思います。
それは、山手線内でのコスパ最強を誇る(と思っている)、飯田橋の「やまじ」。

先に書いたように、わたしは飯田橋近辺で、なかなかの時間まで仕事をする日が年に30回ほどあって、そんなときは飲み屋さんを探し歩いていました。
なんとなく、「今日は千代田ビル飲食街のどこかがいい」と思った日がありました。あの、飯田橋のベッカーズの向かいにある、古~いあやしいビルです。ラーメン高はしは閉まってるけど、それ以外の飲み屋さんがどれも開いています。が、店内が分かりにくくてなかなか決められない。で、相方が「よし、ここにしよう!」と背中を押してくれたのが「やまじ」でした。

1階は立ち飲みですが、2階には椅子があります。2階の窓からは、総武線のホームと電車が、反対側に神田川が見えるという、すばらしすぎるロケーションです。

さらに、メニューが殆ど300円以下。なかでもすさまじいのが、その日の日替わりメニューで、オール250円。ホワイトボードいっぱいに書いてあります。お好み焼とやきそば、玉子焼は微妙に変化しながら毎日あります。お好み焼はふわふわでとても美味だし、玉子焼の具は変わり種が多くて楽しい。

前金制なので、机の上に百円玉を並べておいて、注文するたびに支払います。このね、机に百円玉を並べておく感じがまた、ゲーセンで格ゲーをやりつづける時のあの感じを彷彿とさせて、少年心なんだかオヤジ心なんだかわからない興奮をもたらします・・・!

で、250円だからとあまり期待しないでいた、料理が実はすごい。おじさんがひとりでちゃっちゃっと作るのですが、枝豆は茹でたてが。刺身のツマは切りたてのみずみずしい大根が。くるのです。ツマが美味いってものすごいことだと思う。丁寧だし、料理センス(&クリエイティビティ)がすっごく良いんです!

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ある日のやまじ。
じゃがバター+イカの塩辛。このメニューは他店でもありますが、実は塩辛が苦手なので食べた事ありませんでした。結論から言うと、うまかった!実にうまかった。今後はじゃがバターを食べるために塩辛を作ってもイイとまで思いました。これ、250円です。

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飲み物は、やまじオリジナルのワインサワー。いまだにワインの味を認識したことがありませんが、おもしろいのでついつい頼んじゃいます。

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ある日の興奮メニュー。
鮎の雑炊。出汁のきいたおいしい雑炊の中に、焼いた鮎の身が1尾ぶん。あと、大量の鮎の卵が入っていました。プチプチしていておいしい。すごく贅沢!
少し前に、母親が鮎の雑炊を作ってくれたことがあるのですが、工程がなかなか面倒くさそうでした。うーん、そんなに手の込んだ料理が、やまじでは250円。

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ある日の興奮メニューその2。鰤の照り焼きのお茶漬け。
前日の残りなのか買ったものなのか、鰤の照り焼きは焼き立てではなかったのですが、でもどどーんとお茶漬けの上に乗っていて、これがまたうまーいの。そもそも、ブリ照りのお茶漬けって思いつかないもの。おやっさんグッジョブ!なんとまあ、250円。
たくあんの無造作っぷりがいいですね。器もプラスティックだったり変な柄だったりするんですが、やまじでは器を気にしてはいけません。

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ある日の仰天メニュー。山菜蕎麦と天ぷら。
うあ、何の天ぷらだったか忘れてしまいました。揚げたての野菜天が4つほど、別皿できてくれました。これを、山菜蕎麦に入れて食べる・・・で、まさかの250円。

写メに残っている写真たちなんですが、どうも炭水化物系にわたしは反応しやすいようですね。実は、日替わりメニューでやきそば以外の炭水化物系は結構レアです。

もっともっと色々あります。とにかくコスパがいい。楽しすぎる・・・ってんで、去年は一時期、毎週来ていましたww それでもまた行きたい。そんな、すばらしいお店です。紅葉川歩きのフィニッシュに、ぜひぜひおススメです。

<参考文献>
「江戸の上水道と下水道」←sumizome_sakuraさん、情報提供ありがとうございました!
「神楽坂界隈」
「神楽坂まちの手帖 第10号」
「川跡からたどる江戸・東京案内」
「神田川再発見}
「新宿区史 第一巻」
「東京の公園と原地形」
「紅葉堀遺跡 地下鉄有楽町線飯田橋駅出入口工事に伴う緊急発掘調査報告書」

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1-8 さんぽ:その他の神田川支流」カテゴリの記事

コメント

やまじ。素晴らしい店。宝物ですよ東京の。
店で味噌maxさんとお会いして飲んだ時は、「サッポロ一番塩味(袋)」つうメニューが250円でしたね。味噌さんが半笑いで注文してみたところ、その具の多さなどの真剣っぷりに圧倒されました。いつまでも続くといいなあ。

投稿: lotus62 | 2012年3月24日 (土) 17時49分

>lotus62さん

「でしたね」って言われても、わたしその時ご一緒してないんですけどw そのメニューは相当レアですねぇ。
というか、やまじには酒のつまみとして素晴らしい日替わりメニューがいっぱいあるというのに、炭水化物の話ばっかり・・・w

投稿: nama | 2012年3月24日 (土) 22時42分

突然のメール失礼致します。

私、テレビ東京おしかけスピリチュアルを担当している
ものなのですが、当番組で靖国通りをご紹介する際に以前は紅葉川という川を埋め立てたという情報をご紹介します。その際に紅葉川がどこからどこまででさらに古地図も使用したいのですが、どちらに問い合わせればよろしいでしょうか。
ご連絡の程、よろしくお願い致します。

投稿: ぺた | 2014年9月19日 (金) 05時56分

>ぺたさま

はじめまして。
古地図をTVで使用する際の手続き等、わたしは存じませんので、たとえば紅葉川についても古地図についても資料を持っておられる、新宿歴史博物館にお問い合わせされてみてはいかがでしょうか。
http://www.regasu-shinjuku.or.jp/?p=372

投稿: nama | 2014年9月19日 (金) 16時10分

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