蛇行地点に住むくらし
おみやげばなしをひとつ。
実家へ帰ったとき、旧友のご両親が営む、とあるお蕎麦やさんへ行ってきました。
山形は蕎麦どころなので、何軒もおいしいお蕎麦やさんがあるのですが、このお店はその中でもとりわけ、山間部にあり景色がすばらしいです。もちろん、(贔屓目でなくて)蕎麦もとてもおいしい。
景色のいちばんの主役は、川です。この日は生憎のあめふりでしたが・・・、それでも川がきれいなままで、うっすらともやがかかり、これもまたきれいでした。
この、少し深くなっているところとか、魚がいるのではないかと、いっつも凝視してしまいます。引き込まれるようです。川を挟んだ向かい側は山の斜面ですが、ここにカモシカが現れたりして、それも蕎麦っ食いを沸かせます。
ほんとに自然に囲まれた凄い場所。旧友というのは部活仲間なのですが、彼女は随一の運動神経を誇っており(人並みじゃないw)、それはこの環境のおかげもあったのかしらん。あ、ここは住居も兼ねているのです。
このときは、結構ひさしぶりに行ったので、おばさま(友人は嫁ぎ済)とうちの家族とで、しばらく話をしていました。
そのとき、はじめて、この川と、ここへ嫁いだおばさまの、格闘のお話を聞きました。
この川は、台風になるととても暴れるのだそうです。そして、写真の手前に見えているいくつもの大きな石(岩?)は、台風のたびに上から流れてきたものなんだそうです。いえ、”流れてきた”なんていう表現はマイルドすぎて、台風のたびに、このような大きな石が上流から襲来して、家の前で他の石や土手などにぶつかり、「ドシーン!ドシーーン!!」というものすごく激しい音がし、ときには何かが破壊され、最初はほんとうに恐ろしかったのだそうです。
そういえば、ここは蛇行地点のようです。蛇行地点というと、川が氾濫しやすそう、というイメージを持ってはいましたが、このような石のぶつかる音、破壊される恐怖、そういったものをリアルに想像しながら聞くことで、台風時のイメージが迫力を伴った気がします。ちなみに東北の台風って、関東の台風よりず~っとおとなしいものです。それなのに。
東京の川に関する資料を読んでいても、よく「台風の時に河川が氾濫して大変だった」という類の記述を見ますが、それはあくまでも、文字を読んだだけ、頭で理解しただけだったのだな、と思いました。「たいふうのときに、かせんがはんらんして、たいへんだったんだな」、と。
その後、おばさまは、だんだんとその音にも慣れ、「あ、この程度の音なら大丈夫」とか、「この音はちょっとヤバイ」とか、区別できるようになったのだそうですw。
板蕎麦を食べます。ここ、天ぷらもおいしいのです。この日は、イチジク、アケビなど、珍しい天ぷらもありました。
そして、さらに衝撃的な話を・・・おじさまが腰を痛めてしまい、もしかしたら店を閉めてしまうかもしれない、とのこと。とりあえず冬季は閉め、しばし様子見をするそうなのですが・・・、閉店はあまりに勿体無い、本当に勿体無い。
それからここ、ひそかに野球のロージンバッグも作っていて、一時期はシェア9割だったのです(今は5割とのことでした)。その生産も、もしかしたら止めになるかも、と・・・。地方の後継者問題、大変なことだなあ、と一同しんみりしました・・・。本当にひさしぶりに行ったので、このようなタイミングでいろいろとお話をうかがえたのも、もしかしたら何かの縁なのかもしれません。
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